今回の計算モデルでは、1年あたりの費用は無機塗料が9.0万円、フッ素塗料が約10.3万円、シリコン塗料が約11.5万円です。想定した耐久年数まで使用できれば、初期費用が最も高い無機塗料が、年あたりでは最も低くなります。
ただし、高耐久塗料の価格差を実際に回収できるかは、今後その住宅を使用する年数と、屋根・シーリングを含めた次回工事の時期で変わります。年あたり費用だけでなく、いつ・何回支払うかまで考えることが大切です。
※一般的な戸建住宅の外壁塗装を想定した仮定の計算モデルです。金額は税込で、同じ住宅・同じ工事範囲・同じ施工品質として計算しています。物価上昇、金利、追加補修費は含めていません。想定耐久年数は保証期間ではありません。
この記事の要点
- 計算モデルの年あたり費用は、無機9.0万円、フッ素約10.3万円、シリコン約11.5万円です。
- 高耐久塗料の価格差は、将来の全面塗装と足場を減らせたときに回収しやすくなります。
- 住宅を使用する残り年数が短い場合は、初期費用を抑えやすいシリコンが合理的なこともあります。
- 外壁だけでなく、屋根・シーリング・付帯部の修繕時期も合わせて判断します。
- 製品データや施工仕様の詳しい確認は施工会社が行い、選定理由を分かりやすく説明することが大切です。
年あたり費用では、どの塗料が安いですか?
今回の計算条件では、無機塗料が年9.0万円で最も低く、次にフッ素塗料、シリコン塗料の順になります。
※表は左右に動かせます。
| 塗料 | モデル工事価格 | 想定耐久年数 | 計算 | 1年あたり費用 |
|---|---|---|---|---|
| シリコン | 150万円 | 13年 | 150万円 ÷ 13年 | 約11.5万円 |
| フッ素 | 165万円 | 16年 | 165万円 ÷ 16年 | 約10.3万円 |
| 無機 | 180万円 | 20年 | 180万円 ÷ 20年 | 9.0万円 |
1年あたり費用の比較
初回の見積金額だけを見るとシリコン塗料が最も安く、無機塗料は30万円高くなります。しかし、想定した年数まで使用できた場合、シリコンと無機の年あたり費用には約2.5万円の差が出ます。
年あたり費用は、異なる耐久年数を比較するための指標です。
毎年2.5万円が現金で戻るわけではありません。価格差を回収しやすくなるのは、高耐久塗料によって次の全面塗装を先送りできる、または足場を伴う工事を1回減らせる場合です。
45歳から85歳まで住む場合、塗り替えは何回必要ですか?
冒頭の計算モデルで、45歳に初回工事を行い、85歳になるまで40年間維持すると、シリコン4回、フッ素3回、無機2回となります。
13年周期
16年周期
20年周期
※表は左右に動かせます。
| 塗料 | 塗装する年齢 | 回数 | 単純な支払総額 | 85歳時点で残る想定年数 |
|---|---|---|---|---|
| シリコン | 45・58・71・84歳 | 4回 | 600万円 | 約12年 |
| フッ素 | 45・61・77歳 | 3回 | 495万円 | 約8年 |
| 無機 | 45・65歳 | 2回 | 360万円 | 0年 |
※45歳に初回工事を行い、想定耐久年数に達した時点で機械的に再塗装するモデルです。85歳で住宅の利用期間が終わる設定のため、85歳ちょうどに必要になる工事は含めていません。将来の物価上昇、補修費、金利は含みません。
単純な支払総額だけでは、完全に同じ条件の比較にはなりません。
85歳時点では、シリコンには約12年、フッ素には約8年の想定年数が残る一方、無機は20年を使い切る計算です。年あたり費用、支払時期、最後の工事を何年使用するかを合わせて判断します。
シリコン塗料は「3回で39年」になる点に注意
シリコン塗料は13年×3回で39年間をカバーします。45歳から数えると84歳までなので、85歳まで切れ目なく維持する数学上の計算では、84歳に4回目の工事が必要です。
ただし、13年目に突然塗膜が機能を失うわけではありません。71歳に行った3回目の塗装を14年間使用できる状態なら、84歳の全面塗装を行わず、85歳まで経過を見る選択も考えられます。その場合、シリコンは3回450万円となり、フッ素の3回495万円より45万円低くなります。
塗り替え時期は年数だけで決めず、外壁、下地、ひび割れ、シーリングなどを施工会社が点検して判断します。お客様が細かな劣化を一つずつ判定する必要はありません。
塗料の価格差を回収しやすい条件は何ですか?
高耐久塗料の価格差を回収しやすいのは、同じ住宅に長く住み、将来の全面塗装と足場を1回減らせる場合です。反対に、次回塗装より前に売却や建て替えを行う場合は、初期費用の差を回収しにくくなります。
回収しやすい場合
- 同じ住宅を長く使用する
- 想定耐久年数まで使用できる
- 全面塗装と足場を1回減らせる
- 屋根やシーリングの周期も近づけられる
- 将来の色替えを頻繁に予定していない
回収しにくい場合
- 10年前後で売却・建て替えを予定している
- 屋根やシーリングのために早く足場が必要になる
- 住宅の状態に合わない製品が選ばれている
- 施工不良で本来の耐久性を発揮できない
- 耐久年数より早く色を変更したくなる
外壁だけ高耐久にしても、足場回数が減らないことがあります
外壁に20年耐久を想定した塗料を使用しても、屋根やシーリングが先に補修時期を迎えれば、そのために再び足場を組む可能性があります。住宅全体の維持費は、最も早く修繕が必要になる部位の影響を受けます。
外壁と屋根の周期を合わせる考え方は「外壁塗装と屋根塗装を同時に行う場合・別々に行う場合の費用比較」、足場費用は「外壁塗装の足場代はいくらか」で解説しています。
価格差の回収とは、塗料代の差だけを取り戻すことではありません。
足場、洗浄、養生、下地処理、シーリング、付帯部塗装、現場管理を含む「次回の工事一式」を減らせるかどうかが重要です。
市川塗装の実際の4プランでは、価格差はいくらですか?
ここからは、上記の150万円・165万円・180万円の計算モデルとは別の実見積例です。
使用製品と見積書記載の耐久年数が異なるため、上の計算モデルとは分けてご覧ください。以下は同じ住宅・同じ工事範囲で、外壁と屋根の塗料プランだけを変更して比較した例です。
市川塗装が実際に作成した提案例では、シリコン154万円に対して超高耐久プランは177万円で、総額の差は23万円でした。足場、下地調整、付帯部などの共通費用があるため、塗料の耐久性が大きく変わっても工事総額の差は比較的小さく収まる場合があります。
※表は左右に動かせます。
| 塗料プラン | 見積書記載の耐久年数 | 保証期間 | 税込総額 | 1年あたり目安 |
|---|---|---|---|---|
| シリコン | 10年 | 5年 | 154万円 | 15.4万円 |
| 高耐久フッ素 | 15年 | 7年 | 158万円 | 約10.5万円 |
| プレミアム無機 | 20年 | 10年 | 170万円 | 8.5万円 |
| 超高耐久 | 24年 | 10年 | 177万円 | 約7.4万円 |
※「超高耐久」は第4の樹脂分類ではなく、市川塗装の提案上のプラン名です。1年あたり目安は、税込総額を見積書記載の耐久年数で割った単純計算です。実際の耐久性・費用は製品、建物の状態、立地、施工条件によって変わります。
30坪・40坪・50坪の総額や工事項目の内訳は「外壁塗装の費用相場と塗料グレード別の4プラン比較」で詳しく解説しています。
同じシリコン・フッ素・無機でも耐久性が違うのはなぜですか?
シリコン、フッ素、無機は塗料を大きく分ける名称であり、すべての製品が同じ性能を持つわけではありません。製品設計、外壁の状態、施工仕様、日当たりや雨掛かりなどによって実際の耐久性は変わります。
お客様が知っておきたいこと
- 分類名だけで耐久年数は決まらない
- 期待耐用年数と保証期間は別の数字
- 同じ条件・工事範囲の総額で比べる
施工会社が確認・管理すること
- 外壁・既存塗膜と製品の適合
- 下塗り材、塗装回数、塗布量、乾燥時間
- メーカー資料と耐候性試験の条件
- 屋根・シーリングを含む次回修繕時期
塗料分類ごとの特徴や向いている住宅は「外壁塗装はシリコン・フッ素・無機塗料のどれを選ぶ?」、無機塗料の商品ごとの違いは「無機塗料なら何でも20年持つ?」で詳しく解説しています。
耐候性試験の細かな比較は施工会社が行います
促進耐候性試験は、製品を比較する材料の一つです。ただし、試験方式、照射条件、水分条件、判定基準が違えば、同じ「5,000時間」でも単純には比較できません。また、試験時間を実際の耐久年数へ一律に換算することもできません。
お客様がJIS規格や試験条件を一つずつ調べる必要はありません。施工会社が提案する製品の資料を確認し、なぜその製品が住宅と使用予定年数に合うのかを分かりやすく説明できることが重要です。
オリジナル塗料やOEM塗料の性能表示については「外壁塗装のオリジナル塗料は高性能?OEM塗料の確認方法」をご覧ください。
自宅に合う塗料は、どのように選べばよいですか?
最初から塗料グレードを決める必要はありません。住宅をあと何年使用するか、初期費用と長期費用のどちらを重視するかを伝え、施工会社から条件の違う複数案を出してもらう方法が分かりやすいです。
- 住宅を使用する予定年数と予算を伝える
売却、建て替え、相続などの予定が分かる範囲で、10年・20年・40年のどこまで考えるかを整理します。 - 条件の違う2~4プランを比較する
工事範囲をそろえ、初期費用、年あたり費用、次回工事の時期を比較します。 - 選定理由を分かりやすく説明できる会社へ任せる
細かな施工条件は施工会社が確認し、お客様にはメリット・注意点・保証範囲を分かりやすく説明します。
お客様が確認する4点
- メーカー名と商品名
- 工事範囲と税込総額
- 次回メンテナンスの目安
- 保証期間と主な保証範囲
市川塗装が確認・管理する事項
- 下地に合う下塗り材と塗装仕様
- 塗装回数、標準使用量、希釈、乾燥時間
- 耐候性試験と期待耐用年数の根拠
- 屋根・シーリング・付帯部との周期調整
見積書を無理なく比較する方法は「外壁塗装の見積書の見方」、期待耐用年数と保証の違いは「外壁塗装の保証は何年あれば安心?」も参考にしてください。
シリコン・フッ素・無機塗料の費用比較でよくある質問
10年以内に売却する予定なら、シリコン塗料で十分ですか?
初期費用を優先するなら、シリコン塗料が合理的な場合があります。ただし、売却までの年数、現在の外壁・屋根の状態、必要な補修範囲によって変わるため、使用予定期間に合う仕様を選びます。
無機塗料は必ず一番お得になりますか?
必ずではありません。長期間住み続け、想定耐久年数まで使用し、将来の塗装と足場を減らせた場合は有利です。短期間で売却する場合や、屋根・シーリングの補修で早く足場が必要になる場合は、価格差を回収できないことがあります。
フッ素塗料よりシリコン塗料の総支払額が低くなることはありますか?
あります。今回の40年モデルで、シリコンの3回目を14年間使用でき、84歳の4回目を行わない場合は450万円です。フッ素は3回で495万円のため、シリコンが45万円低くなります。実際に1年延ばせるかは、施工会社が劣化状態を確認して判断します。
期待耐用年数と保証年数は同じですか?
同じではありません。期待耐用年数は一定条件における耐久性の目安で、保証年数はメーカーや施工会社が定めた範囲で不具合に対応する期間です。保証期間だけでなく、主な対象範囲の説明を受けてください。
屋根の耐久年数が外壁より短い場合はどうしますか?
外壁より高耐久な屋根塗料を選ぶ、次回は屋根カバー工法を計画するなど、住宅全体で次に足場が必要になる時期を近づけます。建物の状態を確認したうえで施工会社が組み合わせを提案します。
塗料の提案を受けたとき、最低限どこを確認すればよいですか?
商品名、工事範囲と税込総額、次回メンテナンスの目安、保証範囲の4点を確認すれば十分です。下地との適合、下塗り材、塗布量、希釈、乾燥時間、試験条件の確認と施工管理は施工会社の責任です。
まとめ|価格差は年あたり費用と残りの居住年数で判断します
今回の計算モデルでは、1年あたり費用はシリコン約11.5万円、フッ素約10.3万円、無機9.0万円です。想定した耐久年数まで使用できれば、無機塗料が最も低くなります。
ただし、45歳から85歳までのように終了時期を決めて比較すると、最後の塗装を何年使用するかで総額が変わります。また、外壁だけ高耐久にしても、屋根やシーリングの補修で同じ回数の足場が必要になれば、価格差を回収しにくくなります。
塗料名だけで結論を決めず、住宅を使用する残り年数、次に足場を組む時期、初期費用と将来費用のどちらを優先するかを整理して選ぶことが大切です。
この記事の結論
- 年あたり費用は、今回の条件では無機塗料が最も低い
- 短期間の総支払額では、シリコンが合理的な場合がある
- 高耐久塗料の価格差は、将来の全面塗装と足場を減らせて初めて回収しやすくなる
- 実際の見積もりは、同じ住宅・同じ工事範囲で比較する
- 細かな製品適合や施工条件は施工会社が確認・管理する
参考資料
- 市川塗装株式会社「外壁塗装の費用相場は?30坪・40坪・50坪の総額と内訳」
- 市川塗装株式会社「外壁塗装はシリコン・フッ素・無機塗料のどれを選ぶ?耐久年数を比較」
- 一般財団法人 日本塗料検査協会「促進耐候性(キセノンランプ法)」
- 一般財団法人 日本塗料検査協会「促進耐候性(紫外線蛍光ランプ法)」
- スガ試験機株式会社「ウェザリングを知る」
- 株式会社アステックペイント「シリコンREVO1000-IR」
- エスケー化研株式会社「期待耐用年数の意味」
本記事の150万円・165万円・180万円は、同じ住宅と工事範囲で塗料グレードだけを変更した仮定の比較モデルです。全国一律の相場や特定製品の見積価格を示すものではありません。実際の費用と塗り替え時期は、建物の大きさ、劣化状態、施工範囲、製品、立地、施工品質などによって変わります。















































AKIHIKO ICHIKAWA