一般的な外壁塗装は、下塗り1回と上塗り2回の合計3回塗りが基本です。ただし、3回という回数だけで適正施工とは判断できません。塗料メーカーが定める仕様、外壁の状態、塗装面積に対する塗布量、希釈率、乾燥時間まで合っていることが大切です。製品や下地によっては2回塗りが正式な仕様となり、吸い込みの強い外壁などでは4回以上必要になる場合もあります。
この記事の結論
- 一般的な塗り替えは「下塗り1回+上塗り2回」の3回塗りが基本です。
- メーカーが2工程を指定する塗料なら、2回塗りでも適正施工です。
- 吸い込みが激しい外壁や、異なる役割の下塗り材を重ねる場合は4回以上になることがあります。
- 回数を増やせば比例して長持ちするわけではありません。必要な塗布量と施工条件を守ることが重要です。
- 雨漏りや既存塗膜の深刻な不具合は、塗り回数を増やしても解決できません。
表は左右に動かせます。
| 塗り回数 | 主なケース | 施工会社が説明すべき内容 |
|---|---|---|
| 2回 | クリヤー塗装や木部用塗料など、メーカーが2工程を指定している場合 | 「本来3回の工事を1回省いた」のではなく、製品の正式な2工程仕様であること |
| 3回 | 下塗り1回+上塗り2回の一般的な外壁塗装 | 材料の組み合わせ、塗布量、乾燥時間が製品仕様に合っていること |
| 4回以上 | 吸い込みが激しい、下地を補強して表面も整えたい、上塗り後も透けが残る場合 | 追加する工程の目的、材料名、施工範囲が明確であること |
| 塗装以外 | 雨漏り、下地の腐食、既存塗膜の広範囲な膨れ・剥離がある場合 | 塗装にこだわらず、補修、張り替え、カバー工法を含めて提案すること |
外壁塗装はなぜ3回塗りが基本なのか
一般的な戸建住宅の外壁塗装では、下塗りを1回、その上に同じ上塗り塗料を2回塗る3工程が多く採用されます。2回目の上塗りを「中塗り」、3回目を「上塗り」と呼ぶのが一般的です。

表は左右に動かせます。
| 工程 | 主な役割 | 注意点 |
|---|---|---|
| 下塗り | 外壁と上塗り塗料を密着させ、下地の吸い込みを整える | 外壁材や既存塗膜に適した下塗り材を選ぶ |
| 中塗り | 色と膜厚を確保し、仕上がりの土台をつくる | 規定の塗布量と塗り重ね時間を守る |
| 上塗り | 色むらを整え、塗料本来の保護性能と美観を仕上げる | 中塗りが十分に乾燥してから施工する |
3回塗っていても適正施工とはいえない場合がある
3つの工程を行ったという記録があっても、次のような状態では塗料本来の性能を期待できません。
- 外壁材や既存塗膜に合わない下塗り材を使用している
- 塗装面積に対して塗料の使用量が不足している
- メーカーの範囲を超えて希釈している
- 塗り重ね可能時間を待たずに次の工程へ進んでいる
- 本来は下塗りを追加すべき状態なのに、合計3回で終えている
- 洗浄、ケレン、ひび割れ補修などの下地処理が不十分である
2回塗りでも適正施工になるケース
メーカーの標準仕様が2工程であれば、2回塗りは工程不足ではありません。塗料は商品ごとに設計が異なるため、すべてを「下塗り・中塗り・上塗り」の3回にそろえる必要はないからです。
クリヤー塗装には2工程仕様の製品がある
日本ペイントの「ピュアライドUVプロテクトSiクリヤー」は、高意匠サイディングの模様を残して保護する透明塗料です。メーカー公式情報では工程が「中塗り・上塗り」、材工価格の条件が「2工程」とされています。このように専用塗料の仕様に沿って2回塗る場合は、正式な施工方法です。
ただし、この製品は光触媒が施されたサイディングには使用できないとされています。施工会社は、塗り回数だけでなく、使用する塗料が外壁へ適合するかも確認する必要があります。クリヤー塗装の可否は、クリヤー塗装ができる外壁・できない外壁の判断基準で詳しく説明しています。
木部や部分補修も製品仕様によって回数が変わる
木部用の浸透形塗料には2回塗りを基本とする製品があります。また、傷みが少ない部分を同種の塗料で補修する場合も、適合確認のうえで上塗りを2回行うことがあります。いずれも、施工会社が商品の仕様と既存塗膜との相性を確認したうえで決定します。
「正式な2回塗り」と「3回塗りから1回省く工事」は別です。3工程が必要な塗料を、説明せず2工程で終わらせれば工程不足です。見積書に2回と書いて同意を得ていても、メーカー仕様から外れていれば、本来想定された性能を期待できません。
4回以上の塗装が必要になるケース
4回以上塗るのは、通常の3工程では下地を整えられない場合や、乾燥後も仕上がりが不足している場合です。単に回数を増やすのではなく、追加する1回に明確な役割があることが条件です。
下地の吸い込みが激しく、下塗りを2回行う
劣化した外壁は、塗った直後から下塗り材が吸い込まれ、表面が塗装前に近い状態へ戻ることがあります。下塗り材が表面に十分残らず、外壁全体の吸い込みが止まっていない場合は、同じ下塗り材をもう1回塗ってから上塗り2回へ進みます。
追加範囲は劣化部分だけの場合もありますが、既存塗膜そのものが吸い込みやすい場合、市川塗装では全面に2回目の下塗りを行うことが多くなります。
浸透性シーラーとフィラーを組み合わせる
ALCや細かな砂状の模様がある外壁などで、内部へ浸透して下地を補強する工程と、表面の凹凸を整える工程の両方が必要になることがあります。その場合は、浸透性シーラー、フィラー、上塗り1回目、上塗り2回目の合計4工程です。
シーラーは主に浸透・密着・吸い込み止め、フィラーは主に細かな凹凸を埋めて表面を整える役割があります。同じ下塗り材を2回塗る方法とは、追加工程の目的が異なります。
下塗り材の役割や選び分けについては、外壁塗装の下塗り材の種類と選び方で詳しく説明しています。
上塗り後も下地が透けている
濃い色から淡い色へ変更する場合や、凹凸が大きく塗料が均一に付きにくい外壁では、上塗り2回後も薄い部分と濃い部分の差が見えることがあります。乾燥後の仕上がりを確認し、規定量を守っていても透けが残る場合は、塗料メーカーへ適合性を確認したうえで上塗りを追加します。
塗り回数が多いほど長持ちするとは限らない
「4回、5回塗るから長持ちする」という説明だけでは、工事の優劣を判断できません。必要な回数と塗布量は、塗料メーカーが製品ごとに設定しています。仕様上必要な膜厚を確保した後、理由なく同じ塗料を重ねても、耐久性が回数に比例して延びるわけではありません。
塗膜は表面から紫外線、雨水、熱の影響を受けます。必要以上の厚塗りは、たれ、乾燥不良、つやむら、美観低下などにつながる可能性があります。メーカーが示す使用量の範囲内で、均一に仕上げることが基本です。
表は左右に動かせます。
| 説明 | 評価のポイント |
|---|---|
| 「吸い込みが強いため、同じ下塗り材を全面に追加します」 | 追加する理由、材料、範囲が具体的 |
| 「シーラーで補強し、フィラーで表面を整えるため4工程です」 | 各材料の役割が分かれている |
| 「当社は必ず5回塗るので、どの家でも長持ちします」 | 下地や製品仕様を見ず、回数だけを根拠にしているため注意が必要 |
塗布量はどのように計算するのか
塗布量は、「実際に塗る面積」と「メーカーの規定使用量」から計算します。塗り回数が合っていても、1回ごとの塗料が極端に少なければ必要な膜厚を確保できません。
最初に塗装面積を求める
市川塗装では、見積もり時に外壁全体の面積を測り、窓や玄関ドアなど塗装しない開口部の面積を差し引いて、外壁の塗装面積を算出します。バルコニー壁や凹凸なども確認し、実際の施工範囲と見積書の面積を合わせます。
基本式:必要量=塗装面積×1㎡・1回当たりの使用量×塗り回数
ただし、メーカー資料が「2回塗り合計」の使用量を示している場合は、さらに2倍してはいけません。施工会社は、メーカー資料が「kg/㎡/回」と「kg/㎡」のどちらで示されているかを確認して計算します。
150㎡を上塗り2回する場合の計算例
日本ペイント「パーフェクトトップSi」のメーカー公表使用量は、1回当たり0.11~0.17kg/㎡です。外壁150㎡へ上塗りを2回行う場合、計算上の必要量は次のようになります。
表は左右に動かせます。
| 計算条件 | 計算式 | 必要量 | 荷姿換算例 |
|---|---|---|---|
| 使用量の下限 | 150㎡×0.11kg×2回 | 33kg | 15kg缶×2+4kg缶×1=34kg |
| 使用量の上限 | 150㎡×0.17kg×2回 | 51kg | 15kg缶×3+4kg缶×2=53kg |
同製品の荷姿は15kgと4kgです。上の缶数は、計算量を下回らない最小の組み合わせ例であり、すべての150㎡の外壁にそのまま当てはまる発注量ではありません。色分け、補修分、施工方法、下地の形状なども含めて現場ごとに調整します。
平滑な外壁と凹凸の大きい外壁では使用量が変わる
メーカーの使用量に幅がある場合、表面が平滑な外壁は少ない側、ざらつきや凹凸が大きい外壁は多い側を目安にします。日本ペイントも、使用量は被塗物の形状、素地の状態、気象条件などで増減すると案内しています。
市川塗装では、ローラー塗装を基準に必要量を考えます。吹き付け塗装では周囲へ飛散する材料ロスがあるため、当社の発注管理では現場条件に応じて計算量より10~20%程度多く準備する場合があります。これはメーカー規定の「壁に塗る量」を増やす意味ではなく、発注時の材料ロスを見込む考え方です。
希釈率と乾燥時間も仕上がりを左右する
必要量を準備しても、過度な希釈や乾燥不足があれば適正な塗膜をつくれません。希釈率と塗り重ね時間は、商品、塗装方法、気温によって異なるため、施工会社がその製品の最新仕様を確認します。
希釈はメーカーの範囲内で行う
例として、パーフェクトトップSiは、はけ・ウールローラー・エアレススプレーの希釈率が水道水3~5%とされています。市川塗装ではメーカー仕様を優先し、その範囲内で施工しやすさと仕上がりを見ながら必要最小限に調整します。
過度に薄めると塗りやすく感じる一方、乾燥後に下地が透ける、色が十分に隠れない、必要な膜厚を確保しにくいといった問題が起こります。ただし、完成後の見た目だけから実際の希釈率を正確に特定することは困難です。
同じ日に中塗りと上塗りができる場合もある
同じ日に2工程を行うこと自体が、直ちに手抜きになるわけではありません。メーカーが定める塗り重ね時間を過ぎ、実際に乾燥しており、気温、湿度、通風、施工後の天候に問題がなければ、朝に中塗り、午後に上塗りを行える製品もあります。
表は左右に動かせます。
| 気温 | 塗り重ね乾燥時間 |
|---|---|
| 5~10℃ | 8時間以上 |
| 23℃ | 3時間以上 |
| 30℃ | 2時間以上 |
上記はパーフェクトトップSiの目安です。使用量、通風、湿度、素地の状態でも乾燥時間は変わります。仕様書上の時間を満たしていても、表面の乾燥状態や当日夜の降雨予報などを確認し、条件が悪ければ無理に次の工程へ進みません。
塗り回数を増やしても直せない状態
雨漏りや下地そのものの不具合は、塗料を重ねるだけでは解決できません。原因を直さないまま厚く塗ると、一時的に見た目が整っても、再び膨れや剥がれが起こる可能性があります。
- 外壁内部へ雨水が入り、雨漏りが発生している
- 既存塗膜が広範囲に膨れ、下地へ安定して密着していない
- 外壁材が割れ、腐食し、塗装で保護できる状態を超えている
- 既存塗膜を十分に除去することが難しく、その上へ塗っても再発が予想される
このような場合は、雨漏り原因の補修、外壁材の部分交換、張り替え、カバー工法などを検討します。塗装できるかどうかではなく、原因を直したうえで建物を維持できる方法を選ぶことが先です。
注意:「傷みが激しいので5回塗れば直る」とは限りません。劣化が塗膜だけにとどまっているのか、外壁材や防水構造まで進んでいるのかを先に診断します。
お客様が施工中の細かな確認をする必要はありません
塗布量、希釈率、乾燥時間、各工程の実施状況は、施工会社が管理すべき項目です。お客様が現場で塗料缶の数を数えたり、塗膜の乾燥状態や希釈率を判断したりする必要はありません。契約前に工事内容が書面で明確になっているかを見て、工事後に施工記録の報告を受ける方法が現実的です。
最も重要なのは契約前の業者選び
塗装の途中を見ても、それが作業中なのか工程完了後なのか、一般のお客様が判断するのは簡単ではありません。そのため、施工中の作業を細かく監視することよりも、最初に適正な工事を行う会社を選ぶことが重要です。
地域で継続して営業しているか、施工実績や口コミに大きな問題がないか、質問へ具体的に答えるか、施工後も責任を持って対応する体制があるかなどを総合して判断します。一つの項目だけで決める必要はありません。
契約前は工事内容が書面で明確かを見る
一般住宅の外壁塗装では、少なくとも次の内容が見積書で分かる状態が望ましいと考えます。
- 下塗り材と上塗り材の商品名
- 基本となる工程と塗り回数
- 外壁の塗装面積
- 追加工程が必要になった場合の説明方法
市川塗装では、塗り回数、商品名、塗装面積、使用量を見積書へ記載しています。使用量の記載は施工内容を明確にするためのもので、お客様自身が必要量を再計算する必要はありません。契約書・約款・仕様書・見積書の役割は、外壁塗装の契約書で確認すべき項目で説明しています。
施工記録は施工会社が作成して報告する
施工会社は、見積もり時の計算上の必要量、発注量、現場への搬入量、実使用量、残量をつなげて管理します。市川塗装では、主要な外壁や屋根について、施工前後の塗料缶と下塗り・中塗り・上塗りの作業状況を写真で記録します。
お客様がこれらを毎日照合したり、現場で缶数を数えたりする必要はありません。完成時に施工内容の報告を受け、不明な点があれば説明を求める程度で十分です。シャッターボックスや水切りなどの小面積部分は、材料の残量管理よりも工程写真を中心に記録するなど、工事規模に合った方法を採用します。
写真は施工内容を説明するための記録になりますが、写真だけで工事全体の適正さを証明できるわけではありません。また、お客様が写真から希釈率や乾燥時間まで判断することも困難です。
施工後に不具合が出た場合は専門業者が原因を調査する
施工後に剥がれや著しいむらが発生した場合も、見た目だけで工程不足、希釈率、乾燥時間を断定することはできません。施工記録と現在の状態を合わせ、専門業者が原因を調査します。足場解体前に行う一般的な仕上がり確認については、外壁塗装の完了検査で確認する箇所をご覧ください。
まとめ
一般的な外壁塗装は3回塗りが基本ですが、必要な回数は製品仕様と外壁の状態によって決まります。正式な2工程仕様もあれば、下塗りの追加などで4回以上必要になる場合もあります。
適正施工には、材料の選定、塗装面積に応じた塗布量、希釈率、乾燥時間、下地処理が関係します。これらは施工会社が管理する項目であり、お客様が施工中に一つずつ監視する必要はありません。契約前に説明と見積書が具体的な会社を選び、施工後に記録の報告を受ける方法が現実的です。
ご自宅に必要な塗り回数を確認したい方へ
市川塗装では、外壁の材質、既存塗膜、吸い込み、凹凸、劣化状態を確認し、必要な工程と塗料の使用量をご説明します。3回でよいのか、下塗りの追加が必要なのか判断しにくい場合はご相談ください。
外壁の状態について相談する参考資料
- 日本ペイント株式会社「パーフェクトトップSi」(使用量、荷姿、希釈率、乾燥時間、3工程仕様を確認/確認日:2026年9月12日)
- 日本ペイント株式会社「ピュアライドUVプロテクトSiクリヤー」(適用下地、2工程仕様を確認/確認日:2026年9月12日)















































AKIHIKO ICHIKAWA