外壁塗装の下塗りは、単に「最初に1回塗る塗料」ではありません。外壁と上塗り塗料を密着させるほか、下地の吸い込みを整えたり、弱った下地を補強したり、表面の細かな凹凸を調整したりする役割があります。
ただし、すべての下塗り材が同じ機能を持つわけではありません。シーラー、プライマー、フィラー、サーフェーサーなどの名称だけで決めるのではなく、外壁材・既存塗膜・劣化状態・上塗り塗料との適合を確認して選定することが重要です。
この記事の要点
- 下塗りには、密着、吸い込み調整、下地補強、表面調整などの役割があります。
- シーラー・プライマー・フィラー・サーフェーサーなどの名称がありますが、機能が重なる製品もあります。
- 「サイディングにはフィラーを使わない」など、名称や外壁材だけで一律に判断することはできません。
- 水性・弱溶剤も、単純に劣化の強弱だけで使い分けるものではありません。
- 塗布量、希釈率、乾燥時間などの施工管理は、施工会社がメーカー仕様に基づいて行う専門事項です。
外壁塗装で下塗りが重要な理由
下塗りが重要なのは、上塗り塗料だけでは解決できない「下地側の条件を整える工程」だからです。上塗り塗料の性能が高くても、下地との組み合わせや施工仕様が適切でなければ、本来想定された仕上がりや耐久性を期待できません。
下塗りの前には、汚れやチョーキング粉などを除去し、塗装できる下地へ整えることも重要です。詳しくは「外壁塗装前の高圧洗浄が必要な理由」をご覧ください。

表は左右に動かせます。
| 役割 | 内容 | 必要になる主な場面 |
|---|---|---|
| 密着性の確保 | 既存の外壁・塗膜と上塗り塗料の間をつなぎ、付着を安定させます。 | 一般的な塗り替え、付着性に配慮が必要な下地など |
| 吸い込み調整 | 下地へ塗料が過度に吸い込まれるのを抑え、仕上がりを整えます。 | モルタル、ALC、吸い込みが大きい下地など |
| 下地補強 | 浸透性を持つ製品などで、表面が弱った下地を安定させます。 | 表面が粉化・脆弱化している場合など |
| 表面調整・隠ぺい | 細かな凹凸や下地の状態を整え、上塗りしやすい表面をつくります。 | モルタル、サイディング、色変更、凹凸がある場合など |
下塗り材によって役割は異なります
一つの下塗り材が「密着・吸い込み調整・下地補強・表面調整」のすべてを同じ程度に行うわけではありません。製品によって得意な役割や適用できる下地が異なるため、商品名とメーカーの施工仕様を確認して選定します。
下塗り材で使われる主な名称|シーラー・プライマー・フィラー・サーフェーサー
外壁塗装の下塗りでは、シーラー、プライマー、フィラー、サーフェーサーなどの名称が使われます。ただし、これらはすべての製品を明確に4種類へ分ける名称ではなく、製品によって機能が重なったり、メーカーによって分類の仕方が異なったりします。
そのため、名称だけで役割や使用可否を判断せず、製品ごとの適用下地・機能・上塗り塗料との組み合わせを確認することが重要です。

シーラー|密着・吸い込み調整・下地補強などに使う
シーラーは、上塗りとの密着性を確保したり、塗料の吸い込みを整えたりする目的で使用されます。製品によっては下地へ浸透し、弱った表面を補強する機能を持つものもあります。
水性タイプや弱溶剤タイプなどがあり、モルタル、コンクリート、ALC、窯業系サイディングなど、製品によって使用できる素材が異なります。
「劣化が少なければ水性、劣化が大きければ弱溶剤」と単純に分けるのではなく、外壁材、既存塗膜、下地の状態、上塗りとの組み合わせから選びます。
プライマー|下地と次の塗膜をつなぐ下塗り材
「プライマー」は、下塗り材を表す名称として広く使われます。外壁用だけでなく、鉄部、非鉄金属、樹脂など、特定の素材への付着性を確保するための専用プライマーもあります。
金属部分では、素地調整を行ったうえで防錆機能を持つ下塗り材を使用するなど、素材によって求められる機能が変わります。「プライマー」と書いてあれば何にでも使えるという意味ではありません。
フィラー|凹凸を整え、製品によっては微細なひび割れに追従する
フィラーは比較的厚みを付けやすく、モルタルなどの細かな凹凸や表面状態を調整する目的で使用されます。
微弾性フィラーなど、製品によっては微細なひび割れへの追従性を持つものもあります。ただし、フィラーそのものをひび割れ補修材として考えるものではありません。深いひび割れや動きの大きいひび割れは、原因に応じた別の補修が必要です。
「サイディングにはフィラーを使わない」とは限りません
フィラーはモルタルで使用されることが多い下塗り材ですが、製品によっては窯業系サイディングを適用下地としているものがあります。例えば日本ペイントの「パーフェクトフィラー」は、窯業系サイディングボードを適用下地に含めています。
そのため、「シーラーだからサイディング」「フィラーだからモルタル」と名称だけで決めず、使用する製品の施工仕様を確認して判断します。
サーフェーサー|下地を整えて上塗りの仕上がりを良くする
サーフェーサー(サーフ)は、製品によって、下地の細かな状態を整えたり、既存色を隠ぺいしたり、上塗り塗料の吸い込みを抑えたりする目的で使用される下塗り材です。
特に窯業系サイディングの塗り替えでは、サイディング用として設計されたサーフェーサーが使用されることがあります。例えば日本ペイントの「パーフェクトサーフ」は、窯業系サイディングボード改修用の下塗材で、下地の隠ぺいや上塗りの吸い込みを抑える性能が示されています。
ただし、「サーフ」という名称だけで使用できる外壁を判断するのではなく、シーラーやフィラーと同様に、製品ごとの適用下地や必要な下塗り工程、上塗りとの組み合わせを確認します。
表は左右に動かせます。
| 主な名称 | 主な役割 | 使用例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| シーラー | 密着、吸い込み調整、製品によっては下地補強 | サイディング、モルタル、ALC、コンクリートなど | 水性・弱溶剤、透明・白など製品差がある |
| プライマー | 下地と次工程の塗膜を密着させる | 外壁、鉄部、金属、樹脂など | 対象素材に適した専用品を選ぶ |
| フィラー | 表面調整、凹凸調整、製品によっては微細なひび割れへの追従 | モルタル、ALC、製品によってはサイディングなど | ひび割れそのものを直す補修材ではない |
| サーフェーサー | 表面調整、隠ぺい、上塗りの吸い込み調整など | 窯業系サイディングなど | 製品ごとの適用下地や必要な下塗り工程を確認する |
この表は一般的な役割を整理したものです。実際には複数の機能を兼ねる製品もあるため、最終的には個別製品の仕様で判断します。
下塗り材は何を基準に選ぶのか
下塗り材は「いつも使っている商品」で決めるのではなく、下地から上塗りまでを一つの塗装仕様として考えて選びます。
1.最初に外壁材を確認する
窯業系サイディング、モルタル、ALC、コンクリート、金属などでは、適した下塗り材が異なります。同じ建物でも、外壁と鉄部では使用する下塗り材が違うことがあります。
2.既存塗膜の種類と状態を確認する
塗り替えでは、新築時の外壁材だけでなく、現在表面に残っている既存塗膜との相性も確認します。付着性に配慮が必要な表面や特殊な既存塗膜では、対応する下塗り材が必要になる場合があります。
3.劣化状態と吸い込みを確認する
同じモルタルやサイディングでも、表面が健全な外壁と、粉化や吸い込みが進んだ外壁では、必要な下塗り仕様が変わることがあります。
下地の吸い込みが大きい場合には、下塗り工程を追加して下地を安定させることもあります。
4.使用する上塗り塗料との組み合わせを確認する
下塗り材と上塗り塗料には、メーカーが定める適用下地や標準的な組み合わせがあります。個々の塗料の性能だけでなく、下塗りから上塗りまでの塗装仕様として適合していることが重要です。

5.メーカーの施工仕様で最終確認する
使用できる下地、標準使用量、希釈、塗り重ね可能時間、使用できる上塗り材などは商品ごとに異なります。施工会社はメーカーのカタログや施工仕様を確認し、その範囲内で現場の状態に合う施工内容を決定します。標準仕様から外れる施工が必要な場合は、メーカーへの確認を含めて適合性を判断します。
外壁材によって下塗り仕様はどう変わる?
下塗り材は、外壁材だけで自動的に決まるものではありません。ただし、外壁材ごとに確認するポイントには違いがあります。
表は左右に動かせます。
| 外壁材 | 主な確認点 | 下塗りの考え方 |
|---|---|---|
| 窯業系サイディング | 既存塗膜、表面状態、劣化、吸水、反り・割れ | 製品仕様に合わせ、シーラーやサーフェーサーなどを選定。製品によってはフィラーも使用できる |
| モルタル | 吸い込み、ひび割れ、凹凸、既存塗膜 | シーラー、フィラー、微弾性フィラーなどから状態に合わせて選定 |
| ALC・コンクリート | 吸い込み、ひび割れ、既存仕上げ、含水状態 | 下地の吸い込みや既存仕上げに合わせてシーラーやフィラーなどを選定 |
| 金属サイディング・鉄部 | さび、旧塗膜、金属の種類、付着状態 | 下地処理後、対象素材に適した防錆下塗りや高付着プライマーなどを選定 |
特に窯業系サイディングは種類が多く、表面の状態や既存塗膜によっては通常の下塗り仕様が適さない場合があります。外壁材の名称だけではなく、現在の表面状態まで含めて判断します。
下塗りを2回以上行う場合がある理由
一般的な外壁塗装では、下塗り1回と上塗り2回の合計3回塗りが基本となる仕様が多くあります。ただし、外壁の状態や使用する製品の仕様によっては、下塗り工程を追加する場合があります。
表は左右に動かせます。
| 状態・仕様 | 対応例 | 目的 |
|---|---|---|
| 吸い込みが大きい | 製品仕様と下地の状態に応じて下塗り工程を追加する | 下地を安定させ、上塗りの吸い込みを整える |
| 下地が弱っている | 浸透・補強性能を持つ下塗り材を使用した後、次の下塗り工程へ進む場合がある | 下地補強と表面調整を分けて行う |
| 複数の下塗り材が必要 | メーカー仕様で適合する組み合わせを確認し、シーラー施工後にフィラーやサーフェーサーなどを使用する | 補強・密着と表面調整などを別工程で行う |
| メーカーが複数工程を指定 | 指定された塗装仕様に従う | 製品本来の性能を発揮させる |
反対に、必要のない下塗りを何度も重ねれば長持ちするというものでもありません。大切なのは、回数ではなく外壁の状態とメーカー仕様に合った工程です。
塗り回数と塗布量の考え方は、 外壁塗装は3回塗りが基本?4回以上必要なケースと塗布量 で詳しく解説しています。
下塗りだけでは直せない劣化もある
下塗り材には下地を整える役割がありますが、傷んだ外壁そのものを何でも修復できるわけではありません。
次のような状態では、下塗りを厚くしたり回数を増やしたりする前に、原因に応じた補修が必要です。
- 深さや動きのあるひび割れ
- サイディング基材まで達した割れ
- 外壁材の反りや浮き
- 既存塗膜の広範囲な膨れ・剥がれ
- 下地の腐食や著しい脆弱化
- 雨漏りや外壁内部からの水分の影響が疑われる状態
ひび割れについては、 外壁のひび割れは何mmから危険?部分補修・塗装の判断基準 も参考にしてください。
また、塗膜の膨れや剥がれがある場合は、原因を確認せず新しい塗料で覆うと再発する可能性があります。詳しくは 外壁塗装が膨れる・剥がれる原因 で解説しています。
お客様が知っておけばよいこと
お客様自身が、施工中の下塗りを細かく監視したり、塗布量、希釈率、乾燥時間を一つずつ確認したりする必要はありません。これらは施工会社がメーカー仕様に基づいて管理する専門事項です。
契約前や仕様説明の段階では、次のような内容が分かれば十分です。
- どの下塗り材を使用するのか
- なぜその下塗り材を選ぶのか
- どの部位に使用するのか
- 通常と異なる工程がある場合、その理由は何か
大切なのは、お客様が職人と同じ施工管理をすることではなく、使用する材料や選定理由を分かりやすく説明し、専門的な施工管理まで安心して任せられる会社を選ぶことです。
市川塗装では施工工程を記録しています
市川塗装では、作業内容が分かるよう工程ごとの施工写真を撮影しています。使用材料についても、使用前・使用後の写真とともに工事完了報告書として提出しています。
お客様に施工中の細かな確認をお願いするのではなく、工事後にも施工内容を確認できる形で記録を残しています。
詳しくは 市川塗装の外壁塗装 をご覧ください。
まとめ|下塗りは「何を塗るか」より「なぜ選ぶか」が重要
外壁塗装の下塗りには、密着、吸い込み調整、下地補強、表面調整などの重要な役割があります。
下塗り材にはシーラー、プライマー、フィラー、サーフェーサーなどの名称がありますが、これらは完全に分かれた分類ではありません。複数の役割を兼ねる製品もあります。
窯業系サイディングに使用できるフィラーもあれば、サイディング用として設計されたサーフェーサーもあります。名称だけで施工仕様を判断しないことが重要です。
下塗り材を選ぶときは、外壁材、既存塗膜、劣化状態、上塗りとの適合、メーカーの施工仕様を組み合わせて判断します。
見積もりや施工仕様を確認するときは、単に「下塗り1回」と書いてあるかではなく、なぜその材料を使用するのかを説明できる施工会社かどうかを一つの判断材料にするとよいでしょう。
外壁の状態に合う塗装仕様をご提案します
外壁材や既存塗膜、劣化状態を確認し、下塗りから上塗りまで適した塗装仕様をご提案します。外壁塗装を検討されている方はお気軽にご相談ください。
外壁塗装について相談する参考資料
- 日本ペイント株式会社「パーフェクトフィラー」 (確認日:2026年9月15日)
- 日本ペイント株式会社「パーフェクトサーフ」 (確認日:2026年9月15日)
- 日本ペイント株式会社「水性カチオンシーラー」 (確認日:2026年9月15日)















































AKIHIKO ICHIKAWA