モニエル瓦は、塗装によるメンテナンスができる屋根材です。ただし、一般的なセメント瓦と同じ考え方で表面を洗浄して塗ればよいわけではありません。モニエル瓦では、表面にあるスラリー層の状態を確認し、劣化して脆弱になった部分を適切に処理することが重要です。
塗り替え時期を迎えたモニエル瓦では、脆弱になったカラースラリー層が残っていることがあります。その上から新しい塗料を塗っても、塗料そのものではなく、下にある弱い層から剥がれることがあります。
そのため、モニエル瓦の塗装では、屋根材の種類を確認し、脆弱なスラリー層や汚れを適切に処理したうえで、実際の下地状態と使用する製品に合った塗装仕様を選ぶことが大切です。
この記事の要点
- モニエル瓦は乾式コンクリート瓦の一種で、一般的なプレスセメント瓦とは表面の仕上げ構造が異なります。
- 塗り替えでは、劣化して脆弱になったスラリー層の処理が重要です。
- 弱いスラリー層が残ったまま塗装すると、その層から塗膜が剥離することがあります。
- 「必ず下塗り2回」など一律に決めず、下地状態と使用製品の施工仕様から工程を決めます。
モニエル瓦とは?一般的なセメント瓦(プレスセメント瓦)との違い
モニエル瓦は、一般に乾式コンクリート瓦・洋風コンクリート瓦と呼ばれる屋根材の一種です。一般的なプレスセメント瓦と外観が似ているものもありますが、表面の仕上げ構造が異なるため、塗り替え時にはその違いを考慮する必要があります。
モニエル瓦は乾式コンクリート瓦の一種
モニエル瓦はセメント系の成形瓦で、製造時に表面へ着色したセメントスラリーを施し、その上に表面仕上げが行われています。この表面構造が、塗り替え時に重要なポイントになります。
「モニエル瓦」と「セメント瓦」をまったく別の材料として考えるのではなく、この記事では、モニエル瓦などの乾式コンクリート瓦と、一般的なプレスセメント瓦を表面構造と塗り替え方法の違いという観点から比較します。
参考: 日本ペイント「洋風コンクリート瓦(乾式コンクリート瓦・モニエル瓦)」
一般的なセメント瓦とは表面の仕上げ構造が異なる
どちらもセメント系の屋根材ですが、モニエル瓦では表面のスラリー層が塗り替え時の付着性に大きく関係します。
そのため、屋根の形が似ているからといって同じ下地処理や同じ塗料仕様で施工するのではなく、まず屋根材の種類と既存表面の状態を確認する必要があります。
表は左右に動かせます。
| 比較項目 | モニエル瓦 | 一般的なセメント瓦(プレスセメント瓦) |
|---|---|---|
| 分類・呼び方 | 乾式コンクリート瓦・洋風コンクリート瓦など | プレスセメント瓦など |
| 表面仕上げ | 着色スラリーを用いた表面仕上げが特徴 | モニエル瓦とは表面仕上げが異なる |
| 判別 | 形状や小口、表面状態などを総合的に確認 | 同様に屋根材の形状や表面状態を確認 |
| 塗り替え時の注意 | 脆弱になったスラリー層への対応が特に重要 | 屋根材・既存塗膜に合った下地処理が必要 |
| 塗装仕様 | 下地状態と使用製品の仕様から決める | 屋根材・下地状態・使用製品の仕様から決める |
モニエル瓦は見た目だけでは判断しにくい場合もある
モニエル瓦とプレスセメント瓦は、小口の形状などが判別材料になることがあります。ただし、屋根は高所にあり、過去の塗装によって表面の特徴が分かりにくくなっている場合もあります。
屋根材の判別は施工会社が行う項目です
屋根材の種類、既存塗膜、スラリー層の状態などは、塗装方法を決めるための専門的な確認事項です。お客様が屋根に上って確認する必要はありません。地上から見ただけでは判断しにくい場合もあるため、現地調査で確認します。
スラリー層とは?モニエル瓦の塗装が剥がれる理由
モニエル瓦の塗り替えで特に注意したいのが、劣化して脆弱になったスラリー層です。弱い層が表面に残った状態で新しい塗膜を作ると、塗料自体が密着していても、その下のスラリー層から剥離することがあります。
参考: 日本ペイント「モニエル瓦屋根の塗り替えは注意が必要と聞いたがなぜですか?」
スラリー層とは
スラリーとは、セメントなどの微粒子を水に混ぜた流動状の材料です。モニエル瓦などの乾式コンクリート瓦では、製造時に着色したセメントスラリーによって表面を仕上げ、その上にクリヤーなどの仕上げが施されています。
塗り替え時に問題になるのは、スラリー層が存在すること自体ではありません。長年の日射や雨などの影響によって、表面に付着力の弱い脆弱な部分が残っていることです。
スラリー層は経年によって劣化する
屋根は、日射や雨、温度変化などの影響を繰り返し受ける部位です。年月が経つにつれて表面の仕上げが劣化し、色あせや表面の粉化などが進みます。
その状態で上から新しい塗料を重ねても、下地となるスラリー層が弱ければ、十分な付着性を確保しにくくなります。そこで塗装前に、脆弱になった部分を適切に処理することが必要になります。
脆弱なスラリー層の上から塗ると剥離することがある
分かりやすく言えば、強い新しい塗膜を作っても、その下に弱い層が残っていれば、弱い部分ごと剥がれる可能性があります。
剥がれの原因は洗浄不足だけではない
モニエル瓦で塗膜剥離が起きた場合、「洗浄が足りなかった」と説明されることがあります。脆弱なスラリー層の残存は大きな要因ですが、剥離原因を洗浄だけに限定することはできません。
下地処理の状態だけでなく、既存塗膜の状態、使用した材料の適合性、乾燥時間、塗り重ね間隔、塗布量など複数の条件が施工後の付着性に影響します。
剥がれ対策で見るべきポイント
「どの塗料を使うか」だけではなく、何の屋根材なのか、どこまで下地を処理したのか、その下地に合う製品をどの仕様で施工したのかを一つの流れとして考えることが大切です。
モニエル瓦の塗装方法
モニエル瓦の塗装では、上塗りを始める前の工程が特に重要です。屋根材と既存塗膜の状態を確認し、脆弱なスラリー層を適切に処理したうえで、実際の下地状態と使用製品に合った塗装仕様を選びます。
モニエル瓦かどうか、既存塗膜、スラリー層、割れや欠損、過去の塗装状態などを確認します。
高圧洗浄を基本に、必要に応じてブラシなどを併用し、脆弱なスラリー層、汚れ、異物を取り除きます。
処理状態や屋根材を確認し、必要に応じて再洗浄、追加の下地処理、割れや欠損の補修を行います。
屋根の状態と使用する塗料メーカーの施工仕様に合わせて、必要な工程を決めます。
指定された塗布量、工程数、乾燥時間、塗り重ね間隔を守って仕上げます。
重要なのは「何回塗ったか」だけではなく、下地状態に合った施工を行うことです。
① 屋根材・既存塗膜・劣化状態を確認する
最初に、屋根材が本当にモニエル瓦なのかを確認します。同時に、既存塗膜の状態、表面の劣化、割れや欠損、過去の塗り替え状況なども確認します。
過去に一度塗り替えられている屋根では、現在見えている塗膜の下にどのような旧塗膜や下地があるのかも重要です。塗装方法は屋根材の名称だけで決めるものではありません。
② 高圧洗浄などで脆弱なスラリー層と汚れを除去する
モニエル瓦では、高圧洗浄が単なるコケや汚れ落としではなく、劣化して脆弱になったスラリー層を処理する重要な工程になります。
高圧洗浄を行いながら、状態によってはブラシなども使用して、弱くなった表面層や汚れ、異物を取り除きます。
スラリー層をすべて削り取るという意味ではありません
塗装前に処理するのは、主に劣化して付着力が低下した脆弱な部分です。「モニエル瓦ならスラリー層を完全に除去する」と一律に考えるのではなく、実際の表面状態と使用する工法に合わせて処理します。
③ 乾燥後に下地状態を確認し、必要な補修・再処理を行う
高圧洗浄が終われば、そのまま次の塗装工程へ進むわけではありません。十分に乾燥させた後、脆弱なスラリー層が十分に処理できているか、既存塗膜や屋根材に問題がないかを施工会社が確認します。
処理が不十分な部分があれば再洗浄や追加の下地処理を行い、瓦に割れや欠損があれば必要な補修を行います。洗浄後の下地確認まで含めて、塗装前の工程です。
使用するメーカーの施工仕様によっては、下塗り後の付着状態まで確認し、必要に応じて追加処理を行います。こうした確認は施工会社側で行う専門的な施工管理です。
④ 下地状態と使用製品に適合する塗装仕様を選ぶ
モニエル瓦だからといって、すべての現場で同じ下塗り材や同じ塗装回数になるわけではありません。
日本ペイントやエスケー化研などには、モニエル瓦を含むセメント系屋根材に対応した下塗り材があります。一方、乾式コンクリート瓦用の専用塗料の中には、通常の状態ではシーラー・プライマーを不要とし、基材の劣化が大きい場合に下塗り材を推奨している製品もあります。
したがって、「モニエル瓦なら必ず下塗り2回」という回数だけで判断するのではなく、下地の状態と使用製品の施工仕様を一致させることが重要です。
参考: 日本ペイント / エスケー化研「エスケー強化シーラー」 / オリエンタル塗料工業「乾式コンクリート」
⑤ 製品仕様に沿って塗布量・乾燥時間・塗り重ね間隔を守る
適切な材料を選んでも、塗布量が不足したり、必要な乾燥時間を取らずに次の工程へ進んだりすれば、本来の性能を発揮しにくくなります。
塗装回数だけではなく、メーカーが定める使用量、乾燥時間、塗り重ね可能時間まで含めて施工管理することが必要です。
市川塗装の現場見解
市川塗装では、モニエル瓦という名称だけで一律に工程を決めず、実際の下地状態と使用する材料の施工仕様を確認して塗装工程を決めています。
過去の施工では、下地の状態に応じて下塗りを2回行い、その後に上塗りを2回施工した事例があります。ただし、これはその建物と使用材料に合わせて採用した施工仕様であり、すべてのモニエル瓦を「下塗り2回・合計4回」で施工するという意味ではありません。
モニエル瓦でも塗装が適さない場合がある
モニエル瓦は塗装できる屋根材ですが、どのような状態でも塗装すればよいわけではありません。瓦自体の損傷が進んでいる場合や、塗膜以外に雨漏りの原因がある場合には、塗装以外の補修を検討します。
瓦の割れ・欠損が多い場合
塗装は屋根表面を保護する工事であり、割れた瓦そのものを元の強度へ戻す工事ではありません。部分的な割れであれば交換や補修を組み合わせられる場合がありますが、損傷が広範囲に及ぶ場合は塗装以外の方法を検討します。
健全な塗装下地を確保しにくい場合
旧塗膜の著しい剥離や屋根材自体の傷みなどにより、適切な下地処理を行っても健全な塗装下地を確保しにくい場合があります。
このような場合に高耐久塗料を上から塗っても、屋根材そのものの問題は改善できません。塗装可能かどうかを先に判断することが重要です。
雨漏りなど塗膜以外に原因がある場合
屋根塗装は、屋根材表面を保護するための工事です。防水シートや屋根下地、取り合い部分などに雨漏りの原因がある場合、表面を塗装するだけでは原因を解決できません。
屋根塗装で雨漏りが直らない理由や、雨漏りの原因を確認して必要な修理を判断する流れは、**「屋根塗装で雨漏りは直る?塗装では直せない原因と必要な修理」**で詳しく解説しています。
屋根の状態によって、塗装・補修・カバー工法・葺き替えなどから適した方法を検討します。工法の違いについては、 屋根塗装・カバー工法・葺き替えの違い|費用・耐久性を比較 をご覧ください。
また、屋根材そのものが塗装に適しているか判断したい場合は、 塗装できない屋根材とは?パミール・コロニアルNEOの見分け方 も参考になります。
市川塗装のモニエル瓦施工事例
市川塗装でも、モニエル瓦の屋根塗装を施工してきました。ここでは、実際に下地状態を確認しながら塗装仕様を決めた施工事例を紹介します。
御殿場市印野|モニエル瓦の屋根塗装
モニエル瓦の下地処理を重視し、十分な高圧洗浄を行ったうえで施工した事例です。この住宅では下塗りを2回行い、その後に中塗り・上塗りで仕上げています。
沼津市大岡|下塗り2回・上塗り2回の施工例
屋根がモニエル瓦だったため、実際の状態に合わせて下塗り2回・上塗り2回の計4回塗りを採用した事例です。これは、この住宅の下地状態と使用材料に合わせた施工仕様です。
施工事例の塗り回数をそのまま他の住宅へ当てはめるものではありません
同じモニエル瓦でも、既存塗膜や劣化状態、過去の塗装履歴、採用する製品によって必要な工程は変わります。施工事例は実際の工事例として紹介しています。
モニエル瓦の塗装で重要なのは下地処理と塗装仕様
モニエル瓦は塗装によるメンテナンスができます。ただし、一般的なプレスセメント瓦などとまったく同じ考え方で施工するのではなく、表面にあるスラリー層の状態を考慮する必要があります。
特に重要なのは、劣化して脆弱になったスラリー層を適切に処理し、乾燥後に下地状態を確認したうえで、その屋根と使用製品に合った施工仕様を選ぶことです。
高耐久塗料を選ぶことだけで屋根塗装の耐久性が決まるわけではありません。どの屋根材なのかを確認し、塗装前の下地を整え、製品ごとの塗布量や乾燥時間を守るところまで含めて施工品質が決まります。
モニエル瓦塗装の結論
- モニエル瓦は塗装によるメンテナンスが可能です。
- 脆弱になったスラリー層を残したまま塗ると、早期剥離の原因になります。
- 洗浄後は乾燥させ、下地状態を施工会社が確認します。
- 下塗りの有無や回数は一律ではなく、下地と使用製品の施工仕様から決めます。
- 屋根材自体の損傷や雨漏りがある場合は、塗装以外の補修が必要になることがあります。
参考資料
- 日本ペイント株式会社「モニエル瓦屋根の塗り替えは注意が必要と聞いたがなぜですか?」
- 日本ペイント株式会社「洋風コンクリート瓦(乾式コンクリート瓦・モニエル瓦)」
- 関西ペイント株式会社「洋風コンクリート瓦 塗り替え工法」
- エスケー化研株式会社「エスケー強化シーラー」
- オリエンタル塗料工業株式会社「乾式コンクリート」
メーカー資料は2026年9月18日に確認しています。製品仕様や施工方法は変更される場合があるため、実際の施工時には使用する製品の最新施工仕様書を確認します。
モニエル瓦か分からない・塗装できる状態か確認したい方へ
モニエル瓦は、屋根材の種類だけでなく表面の劣化状態を確認して施工方法を決める必要があります。市川塗装では屋根の状態を確認したうえで、塗装が適しているか、別の補修が必要かをご案内します。















































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