外壁塗装を検討していると、「臭いが少ない水性塗料の方がよいのか」「耐久性を考えると油性塗料にすべきか」と迷うことがあります。しかし、どちらか一方がすべての部位で優れているわけではありません。塗る素材や既存塗膜、周辺環境、求める仕上がりに合わせ、施工業者が製品仕様まで確認して選ぶことが大切です。
本記事では、一般に「油性塗料」と呼ばれる溶剤系塗料のうち、住宅塗装で主に使用する弱溶剤塗料を中心に比較します。
この記事の結論
- 臭いへの配慮を優先しやすいのは水性塗料です。ただし、無臭ではありません。
- 耐久性は、水性か油性かだけでは決まりません。素材との相性、下地処理、下塗り材、塗布量、乾燥時間なども重要です。
- 市川塗装では、一般的な外壁は水性、屋根・鉄部・付帯部は弱溶剤を基本にしています。
- 具体的な製品は、施工業者が適用下地とメーカーの標準仕様を照合して選定します。
水性塗料と弱溶剤塗料を比較
水性塗料と弱溶剤塗料の主な違いを、臭い・使用部位・施工性・耐久性・価格の順に比較します。市川塗装では、一般的な外壁は水性、屋根・鉄部・付帯部は弱溶剤を基本候補にしています。
水性塗料は臭いを抑えやすいため、使用量の多い外壁で、居住者や近隣への負担を軽くしやすい点がメリットです。一方、弱溶剤塗料は、金属面などでの施工性や仕上がり、下地との相性を考えて選ぶことがあります。
金属サイディング外壁や既存塗膜との相性に制約がある場合など、基本の使い分けから外れるケースもあります。施工業者が具体的な商品名まで決め、メーカーの適用下地・下塗り・施工条件を照合したうえで最終選定します。
下塗り材も「シーラー」「プライマー」という呼び方だけでは決まりません。施工業者が外壁材・既存塗膜・劣化状態・上塗り塗料を確認して選定します。詳しくは、外壁塗装の下塗り材の種類と選び方をご覧ください。
表は左右に動かせます。
| 比較項目 | 水性塗料 | 弱溶剤塗料(一般に油性と呼ばれるもの) |
|---|---|---|
| 臭い | 比較的抑えやすい。ただし無臭ではない | 溶剤特有の臭いがある |
| 希釈 | 希釈が必要な製品では水を使用 | 希釈が必要な製品では指定の塗料用シンナーなどを使用 |
| 市川塗装での主な使用部位 | 一般的な外壁、軒天など | 屋根、鉄部、雨戸、シャッターボックスなど |
| 施工・仕上がり | 製品や下地によっては、ローラー目・刷毛目への配慮が必要 | 平滑な金属面で、なじみや仕上げやすさを得やすいことがある |
| 耐久性 | 水性・弱溶剤の区分だけでは決まらない。樹脂、下地との相性、塗装仕様、施工品質などを含めて判断する | |
| 価格 | 水性・弱溶剤という区分だけでは決まらない。樹脂グレード、1液・2液、下塗り材、塗布量など、具体的な製品と塗装仕様によって異なる | |
「施工・仕上がり」の比較は、市川塗装が住宅塗装で使用してきた製品と施工経験に基づく傾向です。すべての製品に一律で当てはまるものではありません。
水性塗料・弱溶剤塗料・強溶剤塗料の分類
水性塗料とは
水性塗料は、水を主な媒体とする塗料です。メーカーが希釈を指定している場合は水で希釈しますが、製品によっては希釈せずに使います。
水性塗料にも樹脂や添加剤などが含まれるため、完全に無臭とはいえません。それでも一般には溶剤系塗料より臭いを抑えやすく、住宅の外壁のように広い面積を塗るときに採用しやすい塗料です。
「油性塗料」は一般向けの呼び方
「油性塗料」は一般向けの呼び方です。本記事では、住宅塗装で使われる溶剤系塗料を、便宜上「油性塗料」として説明しています。
溶剤系塗料は有機溶剤を媒体に使用します。希釈が必要な場合は、メーカーが指定する塗料用シンナーなどを使います。水性塗料より溶剤特有の臭いが出やすい一方、素材や既存塗膜との相性、施工性から選ばれることがあります。
溶剤系塗料には引火性のある製品もあるため、施工業者は火気を避け、換気や保護具を含めて施工要領書とSDSに従います。水性塗料も化学製品であるため、同様に製品ごとの取扱方法を守ります。
弱溶剤と強溶剤の違い
住宅塗装でよく使われるのは、比較的溶解力が穏やかな弱溶剤塗料です。一般的な住宅塗装で「油性」と説明される塗料の多くは、この弱溶剤に当たります。
強溶剤塗料は、より溶解力の強い溶剤を使う塗料です。臭いも強くなりやすく、下地や既存塗膜への影響にも注意が必要なため、住宅では製品や工法が指定された特殊な場面を除き、一般的な選択肢になることは多くありません。
「水性・溶剤」「1液・2液」「シリコン・フッ素」は別の分類
水性か溶剤系かという区分と、1液型か2液型か、シリコンかフッ素かという区分は、それぞれ別の分類です。例えば「水性1液シリコン」や「弱溶剤2液フッ素」のように組み合わされます。
水性・弱溶剤・強溶剤
1液型・2液型
シリコン・フッ素・無機系など
外壁用・屋根用・鉄部用など
メーカーの商品一覧でも、水性・溶剤、1液・2液、樹脂、適用素材は別々の条件として整理されています。「水性だから1液」「油性だから高耐久」と単純に結び付けることはできません。
1液型と2液型では、硬化剤を現場で混合するかどうかや、可使時間の管理方法などが異なります。詳しくは、1液型塗料と2液型塗料の違いで解説しています。
臭いを抑えやすいのは水性塗料
臭いへの配慮を優先するなら、一般には水性塗料が選びやすいでしょう。特に外壁は面積が広く、使用する塗料の量も多いため、市川塗装では一般的な外壁に水性塗料を使うことを基本にしています。
ただし、水性塗料も無臭ではありません。臭いの強さや残る期間は、製品、使用量、乾燥条件、風向き、換気の状況によって変わります。
臭いは風向き・窓・換気口の影響を受ける
同じ塗料を使っても、施工場所から窓や換気口までの距離、当日の風向き、周囲の建物の配置によって、室内や隣家へ臭いが入りやすくなることがあります。
施工業者が自宅と周辺住宅の窓・換気口、風向き、材料置き場を確認し、必要に応じて臭いが出る工程と時間帯を近隣へ案内します。施主が周囲を細かく調べたり、すべての近隣住宅へ説明したりする必要はありません。詳しくは、外壁塗装の近隣トラブルを防ぐための注意点をご覧ください。

小さな子ども・高齢者・妊娠中の方・ペットがいる場合
臭いに敏感な方やペットがいる場合は、見積もりの段階で施工業者へ伝えてください。素材や塗装仕様に適合する範囲で水性塗料を選び、臭いが出やすい日を事前に共有するなどの対応を検討します。
水性塗料だから一律に安全、溶剤系だから一律に危険という意味ではありません。施工業者が使用商品の製品資料とSDS(安全データシート)を確認し、必要な注意点を説明します。換気口をふさぐ対応は室内換気や燃焼機器に影響するおそれがあるため、居住者だけで判断せず施工業者と相談してください。
油性塗料の方が耐久性は高い?
「油性塗料なら水性塗料より必ず長持ちする」とは限りません。現在は水性塗料にも多くのグレードがあり、同じシリコン塗料やフッ素塗料でも、水性・弱溶剤の両方が販売されています。
耐久性を比べるときは、何に対する強さを指しているのかを分けて考える必要があります。
塗膜表面の耐候性が関係します。水性・溶剤だけでなく、樹脂や顔料、製品設計の影響を受けます。
下地との相性、洗浄やケレン、下塗り材、乾燥条件などが大きく関係します。
素地調整、錆止め塗料、上塗りまでを含む塗装仕様全体で判断します。
所定の塗布量・回数・乾燥時間を守り、必要な塗膜を形成できたかが重要です。

鉄部は下地処理から上塗りまでの組み合わせが重要
鉄部では、塗料の水性・溶剤という区分だけでなく、錆の除去、素地調整、錆止め塗料の選定、上塗りとの適合性までを一つの塗装システムとして考えます。
市川塗装では、防錆性、施工性、仕上がりを総合して、鉄部に弱溶剤塗料を選ぶことが多くあります。一方、金属に使用できる水性塗料や水性の錆止め塗料もあるため、「鉄部には水性を使えない」と一律に決めるのも正確ではありません。
厚く塗れば塗るほど長持ちするわけではない
メーカーが定める塗布量を守り、必要な塗膜厚を確保することは重要です。しかし、規定を超えて厚く塗れば、その分だけ耐用年数が比例して延びるわけではありません。極端な厚塗りは、乾燥不良や剥がれなどの不具合につながる場合があります。
塗布量、塗装回数、塗り重ね乾燥時間は施工業者が管理します。詳しくは、外壁塗装の塗り回数と塗布量をご覧ください。塗料ごとの耐久性については、外壁塗料のグレード比較で解説しています。
水性塗料は一般に気温が低いほど乾燥が遅くなります。また、製品によっては高湿度、結露、降雨が予想される条件では施工できません。施工業者が製品ごとの最低気温、湿度、塗り重ね可能時間を確認して工程を判断します。
乾燥時間は、水性・溶剤という分類だけで決まるものではなく、製品や気温・湿度などによって異なります。塗料の乾燥時間・塗り重ね間隔と気温・湿度の関係については、こちらで詳しく解説しています。
水性塗料と弱溶剤塗料が向いている部位
一棟すべてを同じ種類に統一するのではなく、部位ごとに水性塗料と弱溶剤塗料を使い分けるのが一般的です。次の図と表は、市川塗装での基本的な使い分けです。施工業者が素材・既存塗膜・劣化状態・製品仕様を確認し、例外を含めて判断します。

表は左右に動かせます。
| 部位・素材 | 市川塗装の基本 | 施工業者が判断するポイント |
|---|---|---|
| 一般的な外壁 | 水性 | 施工面積が広いため、臭いを抑えやすい水性を中心に選ぶ |
| 金属サイディング外壁 | 弱溶剤を選ぶことが多い | 金属の種類、既存塗膜、錆の状態、メーカーの適用下地を確認する。使用可能な水性製品もある |
| スレート屋根 | 弱溶剤を中心に検討 | 施工性や屋根板金部の仕上がりを含めて選ぶ。水性の屋根用塗料もあるため、製品仕様を優先する |
| 金属屋根・鉄部 | 弱溶剤を選ぶことが多い | 錆の状態と素地調整、錆止め、上塗りの組み合わせで判断する |
| 雨戸・シャッターボックス | 弱溶剤を選ぶことが多い | 平滑な金属面のため、なじみや刷毛目・ローラー目を含む仕上がりを重視する |
| 雨樋などの付帯部 | 弱溶剤を選ぶことが多い | 塩ビ・金属などの素材に適した下塗りと上塗りを選ぶ |
| 軒天 | 水性 | 臭いを抑えやすく、つやや平滑性を強く求めないことが多い。軒天用製品の仕様に従う |
| 木部 | 仕上げ方により選択 | 既存塗膜と、浸透型・半造膜型・造膜型のどれにするかを先に決める |
外壁と軒天は水性塗料を選ぶことが多い
一般的な窯業系サイディングやモルタル外壁では、水性塗料を中心に選びます。最大の理由は、広い面積を塗るときの臭いへの配慮です。軒天も、平滑なつやを求める場所ではないことが多いため、水性の軒天用塗料を使うのが基本です。
外壁塗装の工程や使用材料、費用については、市川塗装の外壁塗装でご案内しています。
屋根は素材と製品仕様を優先する
市川塗装では、スレート屋根や金属屋根で弱溶剤塗料を使うことが多くあります。施工時のなじみやすさに加え、屋根に付随する板金部も仕上げやすいことが理由です。
ただし、メーカー各社から水性の屋根用塗料も販売されています。「屋根だから必ず油性」とは決めず、施工業者が屋根材、劣化状態、適用下地、下塗りを確認して選定します。
屋根材別の塗装方法や費用については、市川塗装の屋根塗装でご案内しています。
鉄部や平滑な付帯部では弱溶剤を選ぶことが多い
鉄部、雨戸、シャッターボックスなどでは、弱溶剤塗料を使うことが多くあります。市川塗装の施工経験では、弱溶剤塗料は平滑な面で塗料がなじみやすく、刷毛目やローラー目を抑えた仕上がりをつくりやすい傾向があります。
これは、すべての弱溶剤製品がすべての水性製品より美しく仕上がるという意味ではありません。使用する道具、希釈、気温、塗り方、職人の技量でも仕上がりは変わります。外壁の艶による見え方は、外壁塗装の艶の選び方で解説しています。
木部は水性・油性より先に仕上げ方を決める
木部では、既存塗膜の種類と、どのような外観に仕上げたいかが重要です。木目を生かす浸透型、木目を残しながら保護膜もつくる半造膜型、表面を覆って色を付ける造膜型などがあり、それぞれに水性・溶剤系の製品があります。
既存塗膜と相性の合わない塗料を重ねると、密着不良や乾燥不良が起きる可能性があります。施工業者が現在の状態と希望する仕上がりから逆算し、適合する製品を選びます。
臭いが気になる場合は溶剤系から水性へ変更できる?
素材、既存塗膜、下塗り・上塗りの組み合わせが適合すれば、水性塗料へ変更できる場合があります。ただし、臭いだけを理由に、その場で水性塗料へ置き換えてよいとは限りません。
特に鉄部は、錆の状態や既存塗膜によって必要な下地処理と錆止めが変わります。水性へ変更する場合も、金属に適用できる製品と、メーカーが認める下塗り・上塗りの組み合わせを施工業者が選定します。
臭いに不安がある場合は、工事開始後ではなく、現地調査や見積もりの段階で施工業者へ伝えてください。耐久性や仕上がりを保てる代替製品があるか、臭いが出やすい工程をどう管理するかを事前に検討できます。
水性塗料と油性塗料はどのように選べばよい?
水性と油性を先に決めるのではなく、施工業者が次の順番で現場条件と製品仕様を照合します。施主が既存塗膜や塗布量まで細かく調べる必要はありません。
- 塗る部位と素材を特定する
窯業系サイディング、金属、スレート、木部、塩ビなどを施工業者が確認します。 - 既存塗膜と劣化状態を調べる
現在の塗膜、錆、剥がれ、膨れ、吸い込みなどを調査します。 - 基本となる候補を決める
市川塗装では、一般的な外壁は水性、屋根・鉄部・付帯部は弱溶剤を基本候補にします。 - メーカーの標準仕様と照合する
適用下地、下塗り・上塗りの組み合わせ、塗布量、工程、乾燥時間を確認します。 - 立地・臭い・仕上がりの条件を加える
住宅密集地、窓や換気口、臭いへの希望、求める艶や平滑性を考慮します。 - 具体的な商品と施工仕様を決める
必要な耐久性を保ち、現場条件にも合う製品を最終選定します。
お客様は商品名・使用部位・選定理由の説明を受ければ十分
施主がすべての塗料を細かく指定したり、施工条件を監視したりする必要はありません。建物を調査したうえで適切な塗料を選び、その理由を分かりやすく説明できる業者を選ぶことが大切です。
見積もりでは、次の3点について説明を受け、希望と相違がないか確認すれば十分です。
- 使用する塗料の商品名と使用部位
- その部位に適していると判断した理由
- 臭いや仕上がりに関する希望が反映されているか
塗料の比較方法については、外壁塗料の選び方・比較をご覧ください。見積書全体の見方は、外壁塗装の見積書の読み方で解説しています。
水性塗料と油性塗料についてよくある質問
水性塗料の上に油性塗料を塗れますか?
塗れる場合はありますが、推奨されない組み合わせもあります。施工業者が既存塗膜の状態とメーカー仕様を照合し、必要に応じてメーカーへの確認や試し塗りを行ってから施工します。
油性塗料を使う日は、窓を開けても大丈夫ですか?
塗装箇所に近い窓は、臭いが入る可能性があるため、基本的に閉めます。風向きや施工位置によって影響が変わるため、施工業者が開閉できる窓や時間帯を事前に案内します。換気設備や燃焼機器に関係する換気口は、居住者だけの判断でふさがないようにします。
水性塗料は乾燥後に雨で溶けませんか?
適切な条件で乾燥して塗膜を形成すれば、雨で簡単に溶けるものではありません。ただし、塗装中や十分に乾燥する前に雨や結露の影響を受けると不具合につながる可能性があるため、施工業者が天候と乾燥時間を管理します。
まとめ
水性塗料と油性塗料は、どちらか一方が全面的に優れているわけではありません。臭いを抑えやすい水性塗料は一般的な外壁に使いやすく、弱溶剤塗料は屋根・鉄部・付帯部で、素材との相性や施工性、仕上がりから選ばれることがあります。
耐久性は、水性・油性の違いだけでなく、素材と既存塗膜、下地処理、下塗り材、塗布量、乾燥時間、施工品質を含めて決まります。施工業者から、どの部位にどの商品を使うのか、その理由について説明を受け、希望と相違がないか確認すれば十分です。
参考資料
- 日本ペイント株式会社「水性塗料と溶剤形塗料はどちらが優れていますか?」 (確認日:2026年9月14日)
- 日本ペイント株式会社「戸建住宅・アパート向け塗料」 (確認日:2026年9月14日)
- 日本ペイント株式会社「外壁用の水性塗料と溶剤形塗料を組み合わせて塗っても大丈夫ですか?」 (確認日:2026年9月14日)
- エスケー化研株式会社「環境への影響について」 (確認日:2026年9月14日)
- エスケー化研株式会社「塗料の性能について」 (確認日:2026年9月14日)
市川塗装では、実際に使用する製品の最新カタログ、標準仕様書、施工要領書、SDSを施工前に確認し、現場条件に合う塗装仕様を決定します。















































AKIHIKO ICHIKAWA