1液型塗料と2液型塗料は、どちらか一方が常に優れているわけではありません。住宅塗装では、液型よりも製品性能、下地、塗装部位、施工品質を優先して選びます。
1液型は現場で硬化剤を配合せずに使用し、2液型は、塗膜の主体となる主剤に、硬化反応を起こすための硬化剤を混ぜて使用します。この記事では、両者の違い、住宅塗装での使い分け、施工上の注意点を、市川塗装の経験をもとに解説します。
執筆・監修:市川塗装株式会社 代表 市川 明彦(1級建築塗装技能士・2級建築士・雨漏り診断士)
この記事の結論
- 1液型:施工現場で硬化剤を配合しない塗料です。
- 2液型:主剤と硬化剤を規定どおりに混合して使用する塗料です。
- 耐候性:市川塗装の経験では、同程度の製品なら2液型の方が、紫外線や雨にさらされた後の色や艶の保持で若干有利と感じることがあります。
- 選び方:液型より、製品性能、下地、塗装部位、施工品質を優先します。
- 使い分け:市川塗装では、外壁・屋根・鉄部の錆止めには2液型、細かな付帯部の上塗りや補修塗装には1液型を使用することが多くなっています。
1液型塗料と2液型塗料は何が違う?
最も大きな違いは、施工現場で硬化剤を混ぜるかどうかです。1液型は現場で硬化剤を配合せずに使用しますが、2液型は主剤と硬化剤を製品ごとに定められた方法で混合して使用します。
1液型塗料
現場で硬化剤を配合しません。
硬化剤の入れ忘れや配合比の間違いがなく、必要な量を取り出して使用しやすいタイプです。
2液型塗料
主剤と硬化剤を混合します。
規定の配合、十分な撹拌、混合後の可使時間を守って使用するタイプです。
1液型塗料は現場で硬化剤を配合しない
1液型塗料は、施工現場で硬化剤を配合せずに使用する塗料です。乾燥・硬化の仕組みは製品によって異なり、「硬化剤が最初から混ざっている塗料」と一律に説明することはできません。
硬化剤の計量がないため、入れ忘れや配合比の間違いは起こりません。雨樋、雨戸、配管など、少量ずつ塗り進める部位では作業を組み立てやすく、混合作業に起因する品質差を抑えやすい利点があります。
ただし、1液型なら施工が簡単で、誰が塗っても同じ仕上がりになるわけではありません。使用前の撹拌、希釈、下地処理、塗布量、乾燥時間などは、2液型と同じように管理する必要があります。
2液型塗料は主剤と硬化剤を混合する
2液型塗料は、主剤と硬化剤が分かれており、使用前に両者を混合します。製品ごとに混合方法が決められているため、目分量ではなく、施工要領書に記載された質量比、容量比、セット全量などの指定に従います。
混合後は少しずつ反応が進むため、定められた可使時間内に使い切らなければなりません。可使時間とは、主剤と硬化剤を混ぜた後に、塗料として使用できる時間のことです。
水性・溶剤系や樹脂グレードとは別の分類
1液型・2液型という分類は、水性・弱溶剤・強溶剤といった分類や、シリコン・フッ素・無機などの樹脂区分とは別です。1液型にも水性と溶剤系があり、2液型にも水性と溶剤系があります。
そのため、「水性だから1液型」「フッ素だから2液型」とは限りません。液型だけで耐久性や適用部位を判断せず、具体的な製品の仕様を確認する必要があります。
水性と溶剤系の違いは水性塗料と油性塗料の比較記事、樹脂グレードの違いはシリコン・フッ素・無機塗料の比較記事で詳しく説明しています。
表は左右に動かせます。
| 比較項目 | 1液型 | 2液型 |
|---|---|---|
| 硬化剤の混合 | 現場での配合は不要 | 使用前に必要 |
| 硬化剤の計量 | 不要 | 製品指定の方法で計量 |
| 撹拌 | 使用前に十分撹拌する | 主剤と硬化剤を均一に撹拌する |
| 可使時間 | 硬化剤混合に伴う制限はない | 混合後に制限がある |
| 配合上の注意 | 硬化剤の配合ミスはない | 入れ忘れ、比率間違い、撹拌不足に注意 |
| 少量施工 | 比較的扱いやすい | 調合量の管理が必要 |
| 残った材料 | 未使用分は密閉し、保管条件・使用期限に従う | 混合前は保管条件・使用期限に従う。混合後は可使時間内に使い切る |
※施工条件は製品によって異なります。実際の施工では、使用する製品の最新カタログ・施工要領書を確認します。
住宅塗装では1液型と2液型のどちらを選ぶ?
住宅塗装では、1液型・2液型だけで塗料を決めません。塗料の樹脂や製品性能、下地との適合性、塗装部位、施工条件を確認して選びます。
同程度の製品なら2液型が若干有利と感じることがある
市川塗装の施工経験では、同じ樹脂区分・用途で同程度の製品を比べた場合、2液型の方が色や艶が残りやすく、塗膜もやや硬いと感じることがあります。そのため、広い外壁や屋根では、少しでも耐候性を高める目的で2液型を選ぶことがあります。
ただし、これはメーカーの比較試験結果ではありません。塗料の種類、色、日当たり、下地、塗布量、施工時の気温などでも結果は変わるため、「2液型なら1液型より何年長持ちする」とは断定できません。また、塗膜は硬ければ硬いほどよいわけではなく、下地の動きへの追従性も必要です。硬さだけで塗料の優劣は判断できません。
1液型にも高耐候性を備えた製品がある
1液型にも、フッ素系などの高耐候製品があります。例えば、日本ペイントの「1液ファインフッソUV」は、1液型のフッ素樹脂系塗料で、高耐候性を特長としています。硬化剤の計量が不要で、主剤と硬化剤の混合に伴う可使時間(ポットライフ)もないと説明されています(出典:日本ペイント「1液ファインフッソUV」)。
一方、同社の2液型フッ素樹脂系塗料「ファインフッソ」は、可使時間(ポットライフ)が23℃で6時間と示されています(出典:日本ペイント「ファインフッソ」)。このように、1液型・2液型の両方に高耐候製品があり、施工条件は製品ごとに異なります。
液型より先に確認したい条件
住宅塗装では、次の条件を確認して使用する製品を選びます。1液型か2液型かは、これらの条件を検討した結果として決まります。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 製品自体の性能 | 耐候性、用途、メーカー仕様、これまでの施工実績 |
| 下地との適合性 | サイディング、モルタル、ALC、屋根材、金属、木部などへの適用可否 |
| 既存塗膜 | 塗膜の種類、密着状態、劣化状況、吸い込み |
| 塗装仕様 | 下塗り材、上塗り材、塗布量、塗装回数、乾燥時間 |
| 塗装部位 | 外壁、屋根、錆止め、付帯部などに求める性能 |
| 施工管理 | 計量、撹拌、希釈、可使時間、施工時の気象条件 |
サイディング、モルタル、ALC(軽量気泡コンクリート)についても、素材名だけで1液型・2液型を決めるわけではありません。既存塗膜や劣化状態を確認し、下地と上塗り塗料の両方に適合する下塗り材を選びます。詳しくは塗料選びよりも重要な下地処理で説明しています。
材料価格も液型だけでは比較できない
市川塗装が普段扱う同等グレードの製品を比べた場合、2液型は1液型より材料価格が10~15%程度高いことがあります。ただし、これは大まかな現場感覚であり、価格差はメーカー、製品、セット容量によって異なります。液型だけでは材料価格や工事価格を比較できません。なお、これは材料価格の差を示す目安であり、足場代や人件費などを含む工事総額が同じ割合で高くなるという意味ではありません。
市川塗装では部位ごとにどう使い分けている?
市川塗装では、外壁・屋根・鉄部の錆止めに2液型を使用することが多く、細かな付帯部の上塗りや補修塗装には1液型を使用することが多くなっています。これは住宅塗装全体に当てはまる決まりではなく、当社が採用している製品、施工実績、現場での作業方法に基づく使い分けです。
表は左右に動かせます。
| 部位・工程 | 基本方針 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 外壁 | 2液型が多い | 広い面積では一定量を連続して使うため、調合した塗料を可使時間内に使い切りやすい |
| 屋根 | 基本は2液型 | 紫外線や雨などの影響を受けやすいため、施工実績のある2液型を優先する |
| 鉄部の錆止め | 2液型 | 防錆性能と下地への適合性を確認し、施工実績のある製品を使用する |
| 鉄部の上塗り | 1液型が多い | 部位に適合し、必要な耐候性を備えた製品を選んで作業性と両立する |
| 雨樋・雨戸・配管 | 1液型が多い | 細かな箇所で必要な量だけ使用しやすい |
| 補修塗装 | 1液型が多い | 使用量が少なく、硬化剤の配合ミスを避けやすい |
| 木部 | 液型だけで決めない | 既存塗膜と求める仕上がりを優先する |
外壁と屋根では2液型を使用することが多い
外壁や屋根は塗装面積が広く、一定量の塗料を連続して使用しやすい部位です。市川塗装では、同程度の樹脂グレードと用途の製品を比べた場合、2液型の方が色や艶を保ちやすいと感じることがあるため、2液型を使用することが多くなっています。
ただし、これは2液型なら必ず長持ちするという意味ではありません。下地の状態や使用する製品によっては1液型を選ぶこともあり、製品の適合性と施工仕様を優先します。
錆止めは2液型、付帯部の上塗りは1液型が多い
鉄部では、錆を抑えるための下塗り工程を重視しています。そのため、市川塗装では防錆性能と下地への適合性を確認したうえで、施工実績のある2液型の錆止め塗料を使用しています。2液型という分類だけを理由に選んでいるわけではありません。
一方、雨樋、雨戸、配管、水切りなどの付帯部は、場所ごとに少量ずつ塗料を使います。2液型を何度も小分けすると、そのたびに硬化剤の計量と混合が必要です。そのため、付帯部の上塗りには、部位に適合し必要な耐候性を備えた1液型を使用することが多くなっています。
木部は液型より既存塗膜と仕上がりを優先する
木部では、1液型・2液型よりも、現在どのような塗料が塗られているか、木の質感をどのように見せたいかを優先します。
木目を生かす場合は木材に染み込む浸透型、表面を塗膜で覆う仕上げの場合は造膜型が基本です。両者の中間となる半造膜型もあります。既存の造膜塗料の上へ浸透型塗料を塗っても木材へ浸透しにくいため、既存塗膜との適合性を確認し、必要に応じて塗膜除去や試し塗りを行って仕上げ方を決めます。
2液型塗料の施工では何に注意する?
2液型塗料では、メーカー指定の配合比で正確に計量し、均一に撹拌したうえで、可使時間内に使い切ることが重要です。調合量は気温や施工面積に合わせ、余裕を持って決めます。
指定された方法で正確に計量する
2液型の混合方法は製品によって異なります。質量比、容量比、セット全量など、メーカーが指定する方法を確認し、硬化剤を目分量で入れないことが基本です。
市川塗装では、質量で小分けする製品についてデジタル秤を使用しています。必要な施工量だけを別容器に取り分け、計算しやすい一定量に分けて、毎回同じ計算方法で硬化剤を加えます。大量に計量する場合は、その重量に対応できる秤を使用します。
撹拌・希釈は製品の施工要領書に従う
塗料の量に応じて大型・小型の電動撹拌機を使い分け、容器の底や側面に混ぜ残しが生じないよう、均一に撹拌します。
主剤と硬化剤を混ぜる順番、水やシンナーなどの希釈剤を加える順番、予備撹拌や熟成時間の有無は製品によって異なります。現場で慣れている方法ではなく、使用する製品のカタログや施工要領書を優先します。
可使時間と気温から一度に作る量を決める
2液型は、最初にその日の塗装面積と作業内容を考え、可使時間に十分な余裕を持って使い切れる量だけを作ります。可使時間ぎりぎりまで使用せず、見た目や粘度だけで使用できると判断しません。
一般に気温が高い夏場は反応が進みやすいため、一度に作る量を減らします。冬場は硬化や乾燥が遅くなるため、塗り重ね可能時間や施工終了時刻にも注意します。市川塗装では、季節によって作業人数を変えるというより、気温、施工面積、可使時間を考えて一度に調合する量を調整しています。実際の判断は、製品ごとに示された温度別の可使時間と乾燥時間に従います。冬季の施工条件については冬の外壁塗装は問題ない?も参考にしてください。
配合ミスは施工直後に分からない場合がある
硬化剤の入れ忘れ、配合比の間違い、撹拌不足、可使時間超過があると、硬化や乾燥の遅れ、塗膜強度・耐久性の低下、艶や仕上がりの異常、密着不良などにつながる可能性があります。
製品や施工条件によっては、配合を間違えても表面だけ乾いたように見え、施工直後には異常を判断できない場合があります。しかし、所定の硬化反応が得られていなければ、本来の塗膜性能を発揮できるとはいえません。ベランダの防水材などでは乾燥が遅れ、翌日以降の工程へ進めないこともあります。
混合済み塗料は可使時間を超えて使用しない
主剤へ硬化剤を混ぜた時点から反応が進むため、可使時間内に使い切れる量だけを調合します。見た目に異常がなくても、可使時間を超えた混合済み塗料は使用しません。混合していない主剤と硬化剤の残りは、容器を密閉し、メーカーが定める保管条件と使用期限に従って扱います。
お客様は1液型・2液型を指定した方がよい?
基本的に、お客様が1液型・2液型を指定する必要はありません。液型は塗料を選ぶ条件の一つにすぎず、それだけでは塗料や塗装工事の品質を判断できないためです。
施工会社へ確認する場合は、「1液型と2液型のどちらですか」と聞くよりも、「この部位にこの製品を選んだ理由を教えてください」と聞く方が、下地との適合性や施工会社の判断内容を確認しやすくなります。
硬化剤の配合比や可使時間は施工会社が管理する項目です。塗装工事には下地処理、下塗り材、塗布量、乾燥時間など多くの管理項目があるため、お客様が一つずつ技術的な判断をするのは現実的ではありません。「2液型を使用する」という説明だけで施工品質が保証されるわけでもありません。
液型より施工会社の実績と管理体制を確認する
お客様が確認するなら、液型の指定よりも次の点を優先してください。
- 見積書に具体的な製品名と使用部位が記載されているか
- 建物の状態を確認したうえで塗装仕様を提案しているか
- 施工実績があり、工程や使用材料を記録・管理しているか
- 不具合が起きた場合の連絡先と責任体制が明確か
こうした点を確認し、「この会社なら建物に合う塗料を選び、適切に施工してくれる」と信頼できる会社へ任せることが大切です。施工品質と責任体制については自社施工と下請け施工の違い、塗料名や使用部位の確認方法については外壁塗装の見積書の見方も参考にしてください。
まとめ|液型より製品性能と施工品質で選ぶ
1液型と2液型の大きな違いは、現場で硬化剤を配合するかどうかです。どちらが常に優れているとはいえず、樹脂グレード、製品性能、下地や部位との適合性を先に確認します。
市川塗装では、外壁・屋根・鉄部の錆止めには2液型、細かな付帯部の上塗りや補修塗装には1液型を使用することが多くなっています。木部は液型ではなく、既存塗膜と求める仕上がりから選びます。
お客様が1液型・2液型だけにこだわる必要はありません。具体的な製品性能、下地との相性、下塗り材を含めた塗装仕様、施工会社の管理体制まで含めて判断することが大切です。
見積書に記載された塗料が建物に合っているか確認したい方へ
見積書に記載された塗料や塗装仕様が建物に合っているか分からない場合は、塗料名、塗装部位、建物の状態を確認したうえでご案内します。
見積書の塗料・塗装仕様について相談する参考資料
- 日本ペイント株式会社「1液ファインフッソUV」(確認日:2026年9月10日)
- 日本ペイント株式会社「ファインフッソ」(確認日:2026年9月10日)
※混合比、希釈率、可使時間、乾燥時間、適用下地は製品ごとに異なります。実際の施工では、使用する製品の最新カタログ・施工要領書をご確認ください。















































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