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アスベストを含むスレート屋根はどう改修する?カバー工法と葺き替えの判断基準

公開日:2026年09月21日 カテゴリー:屋根メンテナンス

アスベストを含むスレート屋根だからといって、すぐに撤去する必要はありません。 屋根材や下地の状態が良ければ、塗装で維持できる場合もあります。

塗装だけでは維持することが難しい場合は、雨漏りや野地板の状態などを確認して、 カバー工法または葺き替えを検討します。 カバー工法は既存のアスベスト含有スレートを基本的に残す方法、 葺き替えは対象となる既存スレートを撤去する方法です。

どの工事を選ぶかは、アスベストの有無だけではなく、 現在の屋根や下地の状態、あと何年建物を使用する予定か、 今回と将来の撤去まで含めて考えることが大切です。

この記事で対象とするスレート屋根

この記事では、主に戸建住宅に使われている平板状の 「住宅屋根用化粧スレート」を対象に説明します。 工場や倉庫などで使われる波形スレートは、施工条件が異なるため対象外です。

この記事の要点

  • アスベストが含まれているという理由だけで、すぐ撤去する必要はありません。
  • 屋根材や下地の状態が良ければ、塗装で維持できる場合があります。
  • カバー工法か葺き替えかを判断するときは、特に雨漏りと野地板の状態が重要です。
  • カバー工法では既存のアスベスト含有スレートが残り、葺き替えでは対象のスレートを今回撤去します。
  • 建物をあと何年使用する予定かも、工事を選ぶ重要な判断材料です。

1.アスベストを含むスレート屋根はすぐ撤去が必要?

アスベストを含んでいるという理由だけで、すぐにスレート屋根を撤去する必要はありません。 屋根材の状態が良く、雨漏りや下地に大きな問題がなければ、 現在の屋根を生かして維持できる場合があります。

アスベストが含まれているだけで撤去する必要はない

住宅屋根用化粧スレートに使用されていたアスベストは、 セメントなどと一緒に板状に固められています。 厚生労働省は、板状に固められたスレートボードなどについて、 通常の使用状態では石綿繊維が飛散する可能性は低いとしています。

出典: 厚生労働省「アスベスト(石綿)に関するQ&A」

一方、撤去・切断・破砕などを行う工事では、 粉じんが発生する可能性があるため、 通常使用している状態とは分けて考える必要があります。

通常使用と改修工事は分けて考えます

「アスベストが入っている屋根を通常使用していること」と、 「アスベスト含有建材を撤去・加工する工事を行うこと」は同じではありません。 工事を行う場合は、事前調査の結果に応じて必要な対策を行います。

戸建住宅に使用される平板状の住宅屋根用化粧スレートの説明用イメージ
住宅屋根用化粧スレートをイメージした説明用画像。アスベスト含有の有無は、屋根の外観だけで判断することはできません。

屋根材の状態が良ければ塗装で維持できる

アスベストを含むスレートだからといって、 塗装できないわけではありません。 屋根材そのものが塗装によるメンテナンスに適した状態であれば、 塗装で維持する方法も選択肢になります。

市川塗装の現場見解

市川塗装がこれまで確認してきた旧来のアスベスト含有スレートには、 築年数が経過していても屋根材自体が比較的しっかり残っているものがあります。 そのため、アスベストを含んでいるという理由だけで塗装対象から外すことはありません。

塗装できることと、塗装だけで屋根を維持できることは別

スレート本体を塗装できる状態でも、 塗装では既存の防水シートを新しくすることはできません。 また、腐食した野地板や雨漏りの原因そのものを塗装で直すこともできません。

そのため、屋根材が塗装可能かだけではなく、 雨漏りの有無、築年数、野地板の状態、これまでのメンテナンス履歴などを合わせて、 塗装で維持することが適切かを判断します。

築年数だけでカバー工法や葺き替えにはしない

築30年、40年と年数が経過していても、 築年数だけを理由に葺き替えを勧めるわけではありません。 市川塗装では、現在の屋根材、雨漏り、野地板、過去の塗装回数などを合わせて判断します。

例えば、過去に何度か塗装されていて今回が3回目の塗装になる場合などは、 築年数とあわせて、今後も塗装で維持することが合理的かを検討します。

アスベストの有無だけで塗装可否は決まらない

アスベスト入りは塗装できて、ノンアスベストは塗装できない、 と単純に分けることはできません。 アスベストを含まないスレートでも、問題なく塗装できる製品は多数あります。

一方、ノンアスベスト化の移行期に販売された一部の屋根材には、 基材自体の劣化状態によって塗装による維持が適さないものがあります。 つまり、塗装できるかどうかはアスベストの有無だけでなく、 製品名と現在の状態を合わせて判断することが重要です。

スレート屋根の塗装判断については、 スレート屋根の塗装方法 をご覧ください。 また、パミールやコロニアルNEOなどについては、 塗装できない屋根材とは?パミール・コロニアルNEOの見分け方 で詳しく説明しています。

2.アスベスト含有スレートのカバー工法と葺き替えでは何が違う?

最も大きな違いは、既存のアスベスト含有スレートを残すか、今回撤去するかです。 カバー工法は既存屋根を基本的に残して新しい屋根を施工し、 葺き替えでは既存屋根材を撤去して屋根を新しくします。

表は左右に動かせます。

アスベスト含有スレートのカバー工法と葺き替えの比較
比較項目 カバー工法 葺き替え
既存スレート 基本的に残す 撤去する
対象のアスベスト含有スレート 建物に残る 今回撤去する
野地板 新しい屋根を確実に固定できる状態が必要 既存屋根を撤去するため直接確認・補修しやすい
撤去・処分 全面撤去をしないため抑えやすい 既存スレートの撤去・運搬・処分が必要
費用の傾向 既存屋根の撤去・処分が少ない分、葺き替えより抑えやすい傾向 撤去・処分工程が増えるため、カバー工法より高くなりやすい傾向
将来の撤去 既存スレートへの対応が将来残る 対象スレートは今回撤去できる
アスベスト事前調査 必要 必要

※実際の費用は、屋根面積・形状・勾配・下地補修の範囲・使用する屋根材などによって変わります。

アスベスト含有スレートを残すカバー工法と撤去する葺き替えの構造比較図
カバー工法は既存のアスベスト含有スレートを残し、葺き替えは既存スレートを撤去します。

出典: 石綿総合情報ポータルサイト「工事の元請業者のみなさまへ」 (解体・改修工事では、工事対象部分についてアスベスト含有の有無を事前調査)

葺き替えを行ったからといって、 建物内に存在する可能性のあるすべてのアスベスト建材がなくなるという意味ではありません。 この表と図表では、今回対象としている住宅屋根用化粧スレートについて比較しています。

一般的な屋根塗装・カバー工法・葺き替えの費用や耐久性については、 屋根塗装・カバー工法・葺き替えの違い で詳しく比較しています。

3.カバー工法を検討できるのはどんな屋根?

カバー工法を検討するうえで特に重要なのは、新しい屋根を確実に固定できる下地が残っていることです。 アスベストを含むかどうかだけでは、カバー工法の可否は決まりません。

野地板が新しい屋根を固定できる状態

カバー工法では、既存屋根の上に新しい屋根を施工するため、 新しい屋根を支える下地に十分な固定力が必要です。

施工会社は、屋根の状態、雨漏りの有無、 屋根上で確認したときの沈みやたわみなども判断材料にします。 ただし、歩いたときにたわまないから野地板が完全に健全、 と一つの確認だけで断定するものではありません。

屋根材に傷みがあっても下地が健全なら検討できる

スレートにある程度のひび割れや欠損がある場合でも、 それだけで全面的な葺き替えが必要とは限りません。 下地が健全で新しい屋根を確実に固定できるのであれば、 カバー工法を検討できる場合があります。

局所的な雨漏りや下地不良なら補修後にカバーできる場合もある

雨漏りがあるからといって、必ず葺き替えになるわけでもありません。 まず雨漏りの原因を確認することが重要です。

市川塗装の現場見解

雨漏りの原因や野地板の不良が一部分に限られている場合は、 原因を確認し、必要な部分を補修したうえで、 カバー工法を続けられるケースがあります。 一部分の下地が傷んでいるからといって、 すぐに屋根全体の葺き替えが必要になるとは限りません。

アスベストの撤去・処分費を抑えやすい

アスベスト含有スレートを葺き替える場合は、 既存屋根の撤去、運搬、適切な処分などの工程が必要になります。

カバー工法では既存スレートを全面撤去しないため、 これらの工程を抑えやすく、 葺き替えより工事費を抑えられる場合があります。

ただし、市川塗装では 「アスベストが入っているからカバー工法」とは判断しません。 費用面のメリットは、工法を選ぶ判断材料の一つです。

カバー工法でもアスベストへの対応が不要になるわけではない

カバー工法は既存スレートの全面撤去を避けられますが、 アスベストに関する対応そのものが不要になるわけではありません。

建築物の改修工事では、 工事対象部分についてアスベスト含有の有無を事前に調査します。 建築物の事前調査は、元請業者等の責任で、 資格要件を満たす調査者が行います。 施工方法に応じて必要な措置は、事前調査結果を基に施工会社側で判断・管理します。

出典: 石綿総合情報ポータルサイト「工事の元請業者のみなさまへ」

アスベスト含有スレート自体は建物に残る

カバー工法を行っても、 既存のアスベスト含有スレートがなくなるわけではありません。 新しい屋根の下に既存スレートが残ります。

そのため、将来建物を解体したり、 屋根を全面撤去したりするときには、 その時点で既存スレートへの対応が必要になります。

カバー工法の施工条件や費用については、 屋根カバー工法とは?費用・耐用年数とできる屋根・できない屋根 もご覧ください。

4.葺き替えを検討した方がよいのはどんな屋根?

既存の野地板まで広い範囲で傷み、新しい屋根を確実に固定できない状態では、葺き替えを検討します。 葺き替えは既存屋根材を撤去するため、 下地を直接確認して必要な補修を行いやすい方法です。

野地板の劣化が広範囲に進んでいる

例えば、野地板が広い範囲で腐食している、 穴が開いている、新しい屋根を十分に固定できる強度が確保できない、 屋根全体に沈みやたわみが見られるといった場合です。

このような状態では、 既存屋根を残すことよりも、 一度屋根材を撤去して下地から補修することを優先します。

雨漏りと下地劣化が広範囲にある

雨漏りがあるだけで葺き替えと決めるわけではありません。 棟板金や壁との取り合いなど、 原因が一部分に限られていれば部分修理で対応できる場合があります。

一方、築年数が経過し、 屋根全体の防水や野地板の劣化とともに雨漏りが起きている場合は、 葺き替えの必要性が高くなります。

雨漏りと屋根工事の考え方については、 屋根塗装で雨漏りは直る?塗装では直せない原因と必要な修理 もご覧ください。

屋根材の損傷が著しく、下地の確認・補修まで必要

屋根材に割れがあるという理由だけで、 すぐ葺き替えにはしません。

ただし、屋根材の損傷が広い範囲に及び、 さらに下地まで確認・補修する必要がある状態では、 既存屋根を撤去して葺き替える方が合理的な場合があります。

費用を抑えたくてもカバー工法を選ばない場合がある

市川塗装の現場見解

お客様が費用を抑えたい場合でも、 新しい屋根を確実に固定できないほど野地板が腐食している場合は、 費用だけを理由にカバー工法は勧めません。 屋根を長く安全に維持できる状態をつくれるかを優先して判断します。

今回の工事でアスベスト含有スレートを撤去しておきたい

技術的にはカバー工法が可能でも、 「アスベストを建物に残しておくこと自体が気になる」 という方もいます。

その場合は、撤去・処分費用とのバランスを理解したうえで、 今回葺き替えて既存スレートを撤去することも選択肢です。

撤去時はできるだけ切断・破砕を避ける

アスベスト含有スレートを撤去する場合は、 できる限り切断・破砕せず、 原形を保った状態で取り外すことが基本です。

撤去した建材は、工事内容に応じて必要な飛散防止措置を行い、 適切に分別・運搬・処分します。 これらは施工会社側が管理する専門事項です。

出典: 環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和8年2月改正)」

5.あと何年建物を使うかで工事の選び方は変わる

屋根工事は、現在の劣化状態だけでなく、その建物を今後どのくらい使用する予定なのかも考えて選びます。 必要以上に大がかりな工事を行うことが、 必ずしも合理的とは限りません。

残りの使用予定年数に合った工事を選ぶ

例えば、建物をあと10年程度使用する予定で、 現在の屋根が塗装で維持できる状態なら、 長期間の使用を前提とした大がかりな屋根更新が必ずしも合理的とは限りません。

逆に、長期間使用する予定の建物では、 今回だけでなく、次の改修や将来の解体まで含めて考える意味があります。

市川塗装の現場見解

市川塗装では、できるだけ高額な工事を選ぶという考え方ではありません。 塗装で維持できるなら塗装を第一候補として検討し、 塗装では難しくても下地が健全ならカバー工法、 下地まで大きく劣化していれば葺き替えというように、 建物の状態と今後の使用予定に合う工事を検討します。

カバー工法では将来の撤去対象が増える

カバー工法では既存のアスベスト含有スレートを残したまま、 その上に新しい屋根を施工します。

そのため将来建物を解体する場合は、 新しく施工した屋根材と、 その下に残っている既存スレートの両方が撤去対象になります。

これは「将来の解体費が必ず何倍になる」という意味ではありませんが、 将来も撤去・処分が必要になることは理解しておいた方がよいでしょう。

今回撤去するか、将来対応するかという違いもある

葺き替えでは、対象となるアスベスト含有スレートを今回撤去します。 カバー工法では、現在の撤去・処分工程を抑えられる一方、 将来の解体・改修時に対応することになります。

どちらが正解ということではありません。 現在の屋根状態、工事費、建物の使用予定、お客様の希望を合わせて判断します。

スレート屋根を塗装・カバー工法・葺き替えから判断する流れ
アスベストの有無だけで決めず、屋根材・雨漏り・野地板・建物の使用予定を合わせて改修方法を判断します。

6.アスベストが含まれているか分からない場合はどうする?

築年数だけでアスベスト含有の有無を断定せず、工事前の事前調査で確認します。 お客様自身が屋根へ上ったり、 屋根材を割って確認したりする必要はありません。

2004年までに製造された製品にはアスベスト含有品がある

国土交通省の資料では、 石綿(アスベスト)含有住宅屋根用化粧スレートの製造期間として 1961年から2004年が示されています。

ただし、 「2004年以前のスレート屋根なら、すべてアスベストを含む」わけではありません。 メーカーや製品によって非石綿化した時期は異なるため、 建築年だけで断定しないことが重要です。

出典: 国土交通省「石綿含有建材の製造時期等に関する資料」

工事前にアスベストの有無を事前調査する

建築物の解体・改修工事では、 工事の規模にかかわらず、 工事対象部分についてアスベスト含有の有無を事前に調査する必要があります。

2023年10月以降に着工する建築物の解体・改修工事では、 一定の資格要件を満たす調査者による事前調査が必要です。 元請業者等の責任で調査を行うものであり、 お客様自身に専門的な判断を求めるものではありません。

出典: 石綿総合情報ポータルサイト「工事の元請業者のみなさまへ」

資料で判断できなければ分析または含有として扱う

図面、製品名、メーカー資料、現地調査などから アスベスト含有の有無を判断できない場合は、 分析によって確認する方法があります。

また、分析を行わず、 アスベストを含むものとみなしたうえで、 必要な措置を行う方法もあります。

出典: 石綿総合情報ポータルサイト「小規模工事等の着工前に必要な手続きについて」

市川塗装の考え方

年代や屋根材の種類からアスベスト含有の可能性があり、 資料などで非含有と確認できない場合は、 安易に「アスベストなし」と判断せず、 必要に応じて含有を前提とした対応を検討します。

一定規模以上では事前調査結果の報告も必要

事前調査そのものは工事規模にかかわらず必要ですが、 建築物の改修工事では、 請負金額が税込100万円以上の場合、 元請事業者による事前調査結果の報告が必要です。

「100万円未満ならアスベスト調査をしなくてよい」という意味ではありません。 事前調査と、一定規模以上で必要になる調査結果の報告は別です。

出典: 石綿総合情報ポータルサイト「石綿事前調査結果報告システムについて」

分かる資料があれば施工会社へ伝える

建築時の図面、屋根材の商品名、過去の改修資料などが残っていれば、 施工会社へ伝えると事前調査の参考になります。

ただし、お客様自身が屋根材を判定したり、 高所へ上って確認したりする必要はありません。

見積もりで説明を受けておきたいこと

葺き替えなどでアスベスト含有スレートを撤去する場合は、 事前調査、必要に応じた分析、撤去、運搬、処分などのうち、 見積金額に何が含まれているか説明を受けておくと分かりやすくなります。

お客様が施工方法を管理する必要はありませんが、 工事範囲と金額については契約前に理解しておくことが大切です。

7.アスベストだけで工法を決めず、屋根と下地の状態から判断する

アスベストを含むスレートだからといって、 すぐに撤去したり、 特定の工法を選んだりする必要はありません。

屋根材が塗装で維持できる状態なら、 塗装を検討できます。 塗装だけでは維持することが難しい場合は、 雨漏りや野地板の状態からカバー工法または葺き替えを検討します。

カバー工法では既存のアスベスト含有スレートが残り、 葺き替えでは対象となるスレートを今回撤去します。 そのため、現在の工事費だけではなく、 あと何年建物を使用するか、 将来の撤去まで含めて考えることが大切です。

市川塗装の現場見解

市川塗装では、アスベストの有無だけで工法を決めません。 屋根材、雨漏り、野地板、過去のメンテナンス、 建物の今後の使用予定を確認し、 必要以上の工事にならない方法を検討します。

古いスレート屋根の改修方法で迷っている方へ

アスベストを含む可能性がある屋根でも、 すぐに葺き替えが必要とは限りません。 屋根材・雨漏り・野地板などを確認し、 塗装・カバー工法・葺き替えのどの方法が合うかをご案内します。

PROFILE
プロフィール写真
市川 明彦
AKIHIKO ICHIKAWA
1級建築塗装技能士・2級建築士|複数の職場で建築塗装・建物メンテナンスの経験を積む。雨漏り診断士・戸建住宅劣化診断士・窯業サイディングメンテナンス診断士の資格も保有。現場で得た知識や判断基準を分かりやすく公開し、誠実な情報発信に取り組んでいる。
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