屋根塗装・カバー工法・葺き替えは、費用だけで選ぶ工事ではありません。塗装によるメンテナンスが可能な屋根材で、屋根材と下地が健全なら塗装で維持できる場合があります。一方、塗装による維持が適さない屋根材や劣化が進んだ屋根では、カバー工法や葺き替えを検討します。
築年数や過去の塗装回数だけで工法を決めるのではなく、屋根材の種類、劣化状態、下地、雨漏りの有無、今後の維持計画を合わせて判断することが大切です。
この記事の要点
- 屋根塗装は、既存屋根を生かして屋根材表面を保護する工事です。
- カバー工法は、既存屋根を残し、その上に新しい防水シートと屋根材を施工します。
- 葺き替えは、既存屋根材を撤去し、必要に応じて下地から改修します。
- 「築20年だからカバー」などと年数だけで決めず、現在の屋根の状態から必要な工事を判断します。
1.屋根塗装・カバー工法・葺き替えの違いを比較
3つの工法で最も大きく違うのは、既存屋根のどこまで残し、どこまで新しくするかです。屋根塗装は既存屋根材を生かす工事、カバー工法と葺き替えは屋根材や防水シートを新しくする工事です。
表は左右に動かせます。
| 比較項目 | 屋根塗装 | カバー工法 | 葺き替え |
|---|---|---|---|
| 工事内容 | 既存屋根材を塗装する | 既存屋根の上へ新しい屋根を施工する | 既存屋根材を撤去して新しい屋根を施工する |
| 既存屋根材の撤去 | なし | 原則なし | あり |
| 防水シート | 原則として更新しない | 新しく施工する | 新しく施工する |
| 下地への対応 | 塗装で直せる範囲は限定的 | 状態により補強や別工法を検討 | 撤去後に確認・補修しやすい |
| 初期費用 | 比較的抑えやすい | 塗装より大きくなりやすい | 撤去・処分費などが加わる |
| 主な目的 | 屋根材表面の保護 | 既存屋根を残した屋根全体の改修 | 既存屋根を撤去した屋根全体の更新 |
| 向いている状態 | 塗装によるメンテナンスが可能な屋根材で、屋根材・下地が比較的健全 | 塗装では維持しにくいが、カバー工法の施工条件を満たす | 下地補修が必要、または既存屋根を残すことが適さない |
築年数や塗装回数だけでは決めません
「築20年以上だからカバー工法」「2回塗装したから次は葺き替え」と一律に決めることはできません。同じ築年数でも、使用されている屋根材や過去の施工履歴、日当たり、現在の劣化状態によって適した工法は変わります。
市川塗装では、主に屋根材の種類、屋根材の劣化状態、下地の状態、雨漏りの有無、今後の維持計画を合わせて判断します。
屋根の色あせ・ひび割れ・サビ・棟板金の浮きなど、症状から工事時期を考えたい場合は、屋根の劣化サイン8選|屋根塗装・補修が必要な症状と判断基準も参考にしてください。
2.3つの工法では屋根のどこまで直す?
屋根塗装・カバー工法・葺き替えは、見た目をきれいにする方法の違いではありません。表面を保護するのか、防水シートまで新しくするのか、既存屋根材を撤去して下地まで確認するのかという工事範囲が異なります。

屋根塗装|既存屋根を生かして表面を保護する
屋根塗装は、既存の屋根材を撤去せず、下地処理と塗装によって表面を保護する工事です。スレートや塗装によるメンテナンスが可能なセメント系屋根材では、塗膜によって吸水を抑え、紫外線や雨による表面劣化を遅らせます。金属屋根では、サビの進行を抑える目的もあります。

一方、塗装によって屋根の構造そのものが新しくなるわけではありません。防水シートの劣化、野地板の腐朽、著しく脆くなった屋根材などは、上から塗料を塗るだけでは直せません。
屋根塗装は雨漏り修理そのものではありません
屋根材表面を塗装しても、雨水の侵入口や防水シート、板金、下地にある不具合を修理したことにはなりません。すでに雨漏りしている場合は、塗装工事を決める前に原因を調べます。
屋根塗装の施工内容については、市川塗装の屋根塗装をご覧ください。
屋根塗装を選ぶ場合、スレート屋根では洗浄や補修だけでなく、下塗りや必要に応じた縁切りも重要です。具体的な施工工程は、**「スレート屋根の塗装方法」**で詳しく解説しています。
カバー工法|既存屋根の上に新しい屋根を施工する
カバー工法は、既存屋根材を原則として撤去せず、その上に新しい防水シート(ルーフィング)と新しい屋根材を施工する方法です。

既存屋根材を大量に撤去しないため、既存屋根材を撤去する葺き替えとは工事内容が異なります。ただし、どの屋根にも施工できるわけではありません。既存屋根材、屋根形状、勾配、下地の状態、使用する屋根材の施工基準などを確認します。
下地の状態によっては、既存屋根へそのまま施工するのではなく、合板を増し張りする工法や、葺き替えを選ぶことがあります。
市川塗装の施工内容や実例は、屋根カバー工法で紹介しています。
葺き替え|既存屋根を撤去して新しくする
葺き替えは、既存の屋根材を撤去し、下にある野地板などを確認したうえで、防水シートと新しい屋根材を施工する方法です。野地板とは、屋根材の下で屋根を支えている板状の下地です。

既存屋根材を外すため、カバー工法よりも下地を直接確認・補修しやすいことが特徴です。一方で、既存屋根材の撤去費や廃材処分費が発生します。
古いスレート屋根などでは、石綿(アスベスト)を含む建材が使われている場合があります。建築物の改修工事では、工事対象部分の材料について石綿含有の有無を事前に調査し、結果に応じて必要な措置を行います。
3.屋根塗装・カバー工法・葺き替えの費用を比較
初期費用は一般に屋根塗装が抑えやすく、カバー工法や葺き替えは新しい屋根材・防水シートなどの材料と施工が加わるため、費用が大きくなります。ただし、現在の屋根に施工できる工法を先に判断することが重要です。
屋根工事の金額は延べ床面積だけでは決まりません。屋根面積、勾配、屋根形状、棟の長さ、下地補修、足場、使用材料などによって変わります。
表は左右に動かせます。
| 工事 | 価格例 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 屋根塗装 | 外壁と同時施工なら追加30万~50万円程度 | 2026年7月時点。40坪前後の一般的な戸建住宅、大規模な下地補修がない場合の目安 |
| 屋根塗装のみを後日施工 | 80万~100万円程度になる場合がある | 足場などを改めて設置する場合を含む目安。屋根面積・塗料・勾配等で変動 |
| カバー工法 | サイト掲載の見積例:128万円 | 屋根80㎡・寄棟・スーパーガルテクト。外壁塗装と同時施工した掲載事例 |
| 葺き替え | 個別見積もり | 既存屋根材の種類、撤去・処分、下地補修、新しい屋根材などで大きく変動 |
上の金額は同じ住宅・同じ条件を横並びに比較したものではありません
屋根塗装の目安とカバー工法の見積例では、住宅条件や工事範囲が異なります。また、128万円は市川塗装サイトに掲載している一つの見積例であり、現在の標準価格を示すものではありません。実際の金額は屋根形状・下地・使用材料・材料価格などによって変わります。
屋根塗装の詳しい費用条件は、外壁塗装と屋根塗装を同時にするといくら?別施工との費用差、カバー工法の内訳は屋根カバー工法の見積り例で確認できます。
初期費用だけで工法を選ばない
まだ塗装で十分維持できる屋根に、必要以上のカバー工法を行う必要はありません。一方、屋根材の種類や劣化状態から塗装による維持が適さない屋根へ、費用を抑える目的だけで塗装しても、期待した期間を維持できない場合があります。
市川塗装の現場見解
屋根工事は「一番安い方法」から選ぶのではなく、現在の屋根に必要な工事範囲を決めてから費用を比較します。塗装で十分なら塗装、塗装では維持しにくければカバー工法や葺き替えまで含めて検討する考え方です。
4.屋根塗装・カバー工法・葺き替えの耐久性・メンテナンスの違い
3つの工法は「何年持つか」だけでは単純比較できません。屋根塗装は既存屋根材の表面を保護する工事ですが、カバー工法と葺き替えは防水シートや屋根材そのものを新しくする工事だからです。
屋根塗装は塗膜を更新するメンテナンス
市川塗装が提案時に用いる屋根塗料の耐久目安は、シリコンで約5~6年、フッ素で約8~10年、無機で約12~15年です。
これは屋根塗膜の次回メンテナンスを考えるための目安であり、屋根材そのものの寿命を示す数字ではありません。実際の劣化時期は、商品、色、勾配、方角、下地、施工状態、周辺環境などによって変わります。
シリコン・フッ素・無機の違いは、外壁塗装はシリコン・フッ素・無機塗料のどれを選ぶ?耐久年数を比較で詳しく解説しています。
カバー工法は屋根材と防水シートを新しくする
カバー工法では、新しい防水シートと屋根材を施工します。そのため、既存屋根へ塗膜を作る屋根塗装とは、改修する範囲そのものが異なります。
例えば、市川塗装でも使用しているアイジー工業のスーパーガルテクトは、メーカー保証規定と保証登録などの条件を満たした製品本体について、塗膜15年、赤さび20年、穴あき25年の保証が設定されています。
部材など、製品本体以外は同じ保証対象ではありません。また、保証年数は「その期間、屋根全体の点検やメンテナンスが不要」という意味ではありません。
葺き替えは必要に応じて下地から更新できる
葺き替えでは既存屋根材を撤去するため、必要であれば野地板などを補修したうえで、新しい防水シートと屋根材を施工できます。
ただし、葺き替えの耐久性を一つの年数で表すことはできません。新しく使用する屋根材、防水シート、下地、施工条件などによって維持計画が変わります。
耐久性は工事範囲とセットで考えます
3工法は耐久年数だけで順位を付けるのではなく、既存屋根のどこまでを残し、どこまで新しくする工事なのかを含めて比較することが重要です。
5.どの工法が向いている?屋根材・劣化状態から判断
工法選びでは、まず雨漏りや下地の大きな劣化がないかを確認し、そのうえで屋根材が塗装によるメンテナンスに適しているか、塗装で維持できる状態か、カバー工法の施工条件を満たすかを判断します。

- 雨漏りや下地の著しい劣化があるか 雨漏りしている、野地板の腐朽が疑われるなどの場合は、塗装を決める前に原因と下地を確認します。 該当する場合:下地を補修できる工法を含めて検討
- その屋根材は塗装によるメンテナンスに適しているか スレートでも、製品の特性や現在の劣化状態によって塗装をおすすめしない場合があります。粘土瓦のように、屋根材そのものへ全面塗装を必要としない材料もあります。 塗装による維持が適さない場合:カバー工法・葺き替えを検討
- 劣化は表面中心で、屋根材が健全か 色あせや塗膜劣化が中心で、大きな割れ・反り・層状の剥離などが少なく、下地にも大きな問題がなければ塗装が候補になります。 条件を満たす場合:屋根塗装を検討
- カバー工法の施工条件を満たすか 既存屋根材、屋根形状、勾配、下地、固定方法、使用する屋根材の施工基準などを確認します。 施工可能ならカバー工法、適さなければ葺き替えを含めて検討
この判断フローは一般的な目安です
実際の施工可否は、屋根材、屋根形状、勾配、下地、雨漏りの原因、使用する製品の施工基準などによって変わります。お客様が屋根へ上って診断する必要はありません。高所や下地の確認は施工業者が行います。
屋根塗装が向いている主なケース
- 塗装によるメンテナンスが可能な屋根材で、表面劣化が中心
色あせや塗膜劣化が進んでいるものの、屋根材自体は比較的健全な状態です。 - 大きな割れ・反り・剥離が少ない
局所的な補修で対応でき、屋根全体を交換する必要がない場合です。 - 下地や防水層に大きな問題が確認されていない
屋根材表面の保護を更新する目的で塗装を検討できます。
カバー工法を検討する主なケース
- 塗装による維持が難しいスレート屋根
パミールなど、製品特性や現在の劣化状態から塗装による維持をおすすめしないスレート屋根があります。 - 屋根材の割れや傷みが広がっている
補修と塗装を繰り返すより、新しい屋根材で覆う方が今後の維持計画に合う場合があります。 - 既存屋根を残した状態で施工条件を満たす
下地、勾配、屋根形状、使用する屋根材の施工基準などを確認して判断します。
塗装によるメンテナンスをおすすめしない屋根材や、その判断方法については、塗装できない屋根材とは?パミール・コロニアルNEOなどの見分け方と改修方法をご覧ください。
葺き替えを検討する主なケース
- 野地板など下地まで補修する必要がある
既存屋根材を外して、下地を直接確認・補修した方がよい場合です。 - カバー工法の施工条件を満たさない
既存屋根材、屋根形状、重量、下地などの条件からカバー工法が適さない場合があります。 - 既存屋根を残さず屋根全体を更新したい
現在の状態と今後の維持計画を踏まえ、屋根材から更新する方法を検討します。
雨漏りしている場合は、工法を決める前に原因を調べる
雨漏りしているからといって、必ず葺き替えが必要とは限りません。反対に、屋根全体へ塗装やカバー工法を行えば、原因を調べなくても雨漏りが直るというものでもありません。
雨水の入口、防水シート、板金、外壁との取り合いなどを確認し、原因に必要な補修を決めたうえで、屋根全体の改修方法を考えます。
実際に雨漏りしている場合は、市川塗装の雨漏り修理・調査もご確認ください。
今後の維持計画も工法選びの判断材料になる
現在の屋根状態だけでなく、その住宅を今後どのくらい使用する予定なのか、外壁工事をいつ行うのか、次回の足場をいつ設置するのかも判断材料になります。
例えば、屋根がまだ塗装で維持できる状態なら、長く住む住宅でも必ずカバー工法にする必要はありません。一方、塗装では長期維持しにくい状態で、今後も長く使用する住宅なら、塗装を繰り返す方法だけでなく、カバー工法や葺き替えを比較する価値があります。
市川塗装の現場見解
工法を決めるときは、「築何年か」「何回塗ったか」だけではなく、今回の工事でどこまで直す必要があるのかを確認します。塗装で十分な部分を必要以上に交換せず、塗装では維持できない部分を無理に塗装しないことが基本です。
6.まとめ|屋根の状態に合った工法を選ぶ
屋根塗装・カバー工法・葺き替えに、一律の正解はありません。それぞれ工事範囲が違うため、価格や耐久年数だけを横並びにして決めるのではなく、現在の屋根に必要な工事を選びます。
判断するときは、次の順序で整理すると分かりやすくなります。
- 屋根材の種類を確認する
- 屋根材の劣化状態を確認する
- 下地の状態を確認する
- 雨漏りの有無と原因を確認する
- 今後の維持計画を考える
屋根の状態は地上から見える部分だけでは判断できないことがあります。お客様が屋根へ上ったり、屋根材や下地を自分で診断したりする必要はありません。専門業者から「なぜ塗装なのか」「なぜカバー工法なのか」「なぜ葺き替えなのか」の理由を説明してもらい、工事範囲・使用材料・金額を確認して決めれば十分です。
塗装・カバー・葺き替えのどれが合うか相談したい方へ
市川塗装では、最初から塗装やカバー工法に決めるのではなく、屋根材と現在の状態を確認して工事方法をご説明します。「今回は塗装で十分か」「カバー工法まで必要か分からない」という段階でもご相談ください。
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参考資料
以下の情報は2026年9月17日時点で確認しています。















































AKIHIKO ICHIKAWA