ウレタン防水に膨れが発生しても、必ずしも全面的にやり直す必要はありません。膨れが軽微で状態が安定していれば経過観察を検討でき、局所的な不具合で原因に対処できるなら部分補修が候補になります。
一方、広い範囲で膨れや接着不良が生じている場合や、既存防水層全体が改修時期を迎えている場合は、全面改修を検討します。ただし、全面改修と、既存防水層をすべて撤去することは同じではありません。
市川塗装では、膨れの大きさや数だけでなく、水分の影響、周囲の接着状態、前回施工からの経過年数、今後の維持管理を考慮して補修方法を判断しています。この記事では、ベランダ・バルコニー・屋上などのウレタン防水について、実際の現場経験を交えて解説します。
この記事の要点
- 小さく安定した膨れは、確認したうえで経過観察する場合がある。
- 局所的な膨れは、雨水浸入などの原因に対処できれば部分補修を検討する。
- 膨れが少数でも、既存防水層全体が改修時期なら全面改修を検討する。
- 全面改修では、既存防水層を残せるか、どの層を撤去すべきかを別に判断する。
ウレタン防水の膨れは補修できる?
ウレタン防水の膨れは、状態によって補修できる場合があります。ただし、すべての膨れを切って直すわけではありません。まずは防水層の損傷や膨れの広がりを確認し、経過観察・部分補修・全面改修のいずれが適切かを考えます。
膨れの状態によって対応方法が変わる
- 経過観察:軽微で安定しており、防水層の破断などが認められない場合。
- 部分補修:不具合が局所的で、雨水浸入や下地の問題に対処できる場合。
- 全面改修:膨れが多数の箇所に発生して広い範囲に分布している場合や、防水層全体が改修時期を迎えている場合。
全面改修を行う場合も、健全な既存防水層を生かして新しい防水層を形成する方法と、既存層を撤去して再施工する方法があります。具体的な判断基準は後ほど説明します。
よく見られるのはゴムボールのような膨れ
市川塗装の現場では、拳大またはそれより小さい、ゴムボールのように盛り上がった膨れを見かけることがあります。触れると強い弾力があり、防水層自体が浮いていると疑われる症状です。施工から10年前後、あるいはそれ以上経過した防水で見られることもあります。
「膨れ」は表面が盛り上がった状態、「浮き」は下地などとの接着が弱くなった状態、「剥離」は接着していた層が離れた状態を指します。複数の状態が重なっていることもあり、見た目や触った感触だけで内部の状態までは確定できません。
トップコートの不具合と防水層の膨れは違う
ウレタン防水の表面には、一般的に紫外線などから防水層を保護するトップコートが施工されています。市川塗装の経験では、トップコートだけが大きくゴム状に膨れることは少なく、ひび割れや剥がれとして現れることが多い印象です。
トップコートのみが傷み、下の防水層が健全なら表面保護層の補修が候補になります。一方、防水層そのものが浮いたり膨れたりしている場合は、トップコートを塗り直すだけでは原因を解消できません。
膨れがあっても雨漏りしているとは限らない
防水層が膨れていても、破れずに連続している場合があります。そのため、膨れがあるというだけで雨漏りが発生しているとは判断できません。ただし、膨れが大きくなったり、歩行や物の移動で傷ついたりすると、防水層が破損するおそれがあります。
市川塗装の現場見解
軽微な膨れをすべて切り取る必要はないと考えています。防水層は、できる限り連続した状態を維持したいからです。小さく、状態が変わらない膨れなら、無理に切開せず経過観察する方がよい場合もあります。
ただし、経過観察できるかどうかは防水層の損傷や雨水浸入の兆候を含めて判断します。破れや漏水の兆候がある場合は、早めの点検が必要です。
ウレタン防水が膨れる主な原因
ウレタン防水が膨れる原因は一つではありません。下地に残った水分、施工後に入り込んだ雨水、接着不良、既存防水層の劣化などが考えられます。原因によって必要な対策が変わるため、膨れた部分だけを直せばよいとは限りません。
下地に残った水分・湿気による膨れ
コンクリートやモルタルなどの下地に水分が残った状態で防水層が形成されると、日射などによる温度上昇で内部の水分や水蒸気の影響が強まり、膨れが生じる場合があります。
市川塗装の経験でも、涼しい時期は目立たなかった膨れが、夏場の高温時に大きくなるケースがあります。冬に施工した防水が、翌年の夏に膨れてくる場合もあります。ただし、夏に膨れたからといって、必ず施工時の残留水分が原因とは限りません。
サッシ・笠木・立上りなどからの雨水浸入
防水工事を行った後に、別の箇所から雨水が入り込み、防水層の下側へ回ることもあります。市川塗装の現場では、サッシと防水立上りの取り合い、サッシまわりの入隅、笠木、水切り下部の隙間などを原因候補として確認します。
水切りの下へ雨水が跳ね返るなど、雨の降り方によって浸入が生じる場合もあります。外部から雨水が入り続けている場合は、浸入口への対策をせずに防水層だけ補修しても、再び膨れる可能性があります。
下地処理不足や材料の接着不良
下地の乾燥が不十分な場合のほか、プライマーの適合性、下地の汚れや脆弱部分、塗布量や施工条件などが接着状態に影響することがあります。防水層と下地の間だけでなく、既存防水層と新しい防水層の間で剥離が起きる場合もあります。
なお、施工直後に見られる縮れなどの症状と、数か月以上経過してから目立ち始める膨れは、同じものとして扱わず、発生時期や状態を分けて調べます。
経年劣化や過去の改修による不具合
施工から年数が経過すると、既存防水層の劣化や、取り合い部分の変化によって雨水が入りやすくなる場合があります。以前に補修した部分から不具合が再発したり、古い防水層の接着状態が悪化したりすることもあります。
市川塗装の現場見解
ウレタン防水の膨れでは、水分が関係しているケースを多く見かける印象があります。ただし、施工時に残った水分なのか、後から入り込んだ雨水なのかで対策は変わります。表面に膨れがあるという事実だけで原因を決めないことが大切です。
ウレタン防水の膨れはどのように調査する?
補修方法を決める前に、専門業者が膨れの広がり、発生位置、周囲の状態を確認します。必要がある場合に内部を調べますが、すべての膨れを最初から切開するわけではありません。
膨れの位置・範囲・周囲の状態を確認する
平場の中央付近だけに膨れているのか、サッシや立上り、笠木に近い場所で膨れているのかを確認します。あわせて、膨れの数、周囲の浮き・剥離、過去の補修履歴、施工からの経過年数などを調べます。
例えば立上り付近なら、外部からの雨水浸入が原因候補の一つになります。ただし、発生位置だけで原因を確定することはできません。
軽微な膨れは切開する必要があるかを先に判断する
小さな膨れで、拡大や破断が見られない場合は、切開せず経過を確認する選択肢もあります。切開すると、その部分を新たにつなぎ直す必要が生じるため、必要のない切開は避けたいと考えています。
ご自身で膨れを切らないでください
カッターなどで防水層を傷つけると、雨水の浸入口を新たにつくってしまうおそれがあります。調査や補修のための切開は、必要性を判断したうえで施工業者が行います。
必要に応じて内部の水分や接着状態を確認する
原因の確認や補修のために切開が必要と判断した場合は、内部に水分があるか、防水層と下地がどこで離れているか、下地にひび割れや劣化がないかを調べます。
内部に水分があれば、その水がどこから来たのかを調べる必要があります。反対に、切開した箇所が乾燥していても、雨水浸入や下地水分の影響を完全に否定できるとは限りません。周囲の状態も含めて判断します。
市川塗装の現場見解
膨れが部分的なら、必要に応じてその箇所の内部を確認し、原因に対処できるかを考えます。一方、広範囲に膨れが生じて原因もはっきりしない場合は、施工条件や使用材料について、より詳しい調査が必要になることがあります。
部分補修で済む?全面改修が必要?判断基準
膨れの数や大きさだけで、部分補修か全面改修かは決められません。市川塗装では、まず現在の防水性能と原因を確認し、続いて防水層全体の改修時期を考慮します。全面改修が必要と判断した場合に、既存防水層を残せるか、撤去すべきかを検討します。
軽微な膨れなら経過観察できる場合もある
膨れが少数で小さく、時間がたっても状態がほとんど変わらず、防水層の破断や漏水の兆候が認められない場合は、専門業者の確認を踏まえて経過観察を選択することがあります。人が頻繁に歩く場所かどうかも判断材料です。
一方、膨れが大きくなる、数が増える、表面が破れる、室内への漏水が疑われるといった場合は、経過観察のままでよいか早めに確認する必要があります。
部分補修で対応できる場合
膨れが局所的で周囲の防水層が健全であり、原因への対策ができる場合は部分補修を検討します。例えば雨水浸入の場所を特定して止水できるなら、膨れた部分を補修する方法が候補になります。
ただし、浸入口が分からないまま水が入り続けていたり、下地から継続的に湿気が発生していたりする場合は、同じ部分だけを直しても再発するおそれがあります。また、小さな膨れでも何度も補修を繰り返している場合は、補修方法そのものを見直します。
膨れが少なくても全面改修を検討する場合
膨れが数箇所しかなくても、既存防水層全体が改修時期に達している場合は、部分補修だけで済ませることが合理的とは限りません。今後ほかの場所でも補修が必要になりそうなら、全面改修を検討します。
反対に、前回の防水工事から5年程度しか経過しておらず、全体がまだ健全なら、今回は部分補修にとどめ、将来の全面改修まで既存防水層を使う選択肢があります。施工から10年以上が経過していれば、全体の改修時期を改めて検討します。5年・10年は一律の寿命や補修基準ではなく、改修計画を考える際の例です。
全面改修では既存防水層を残すか撤去するかを判断する
全面改修が必要になっても、既存防水層を必ずすべて撤去するわけではありません。健全な部分を生かして重ねて改修できる場合もあります。一方、防水層が広範囲に浮いている、層間剥離が広がっている、下地に問題があるといった場合には、必要な層の撤去を検討します。
撤去の必要性は、どの範囲まで撤去するか(局所的な撤去・平場全面など)と、どの層まで撤去するか(ウレタン防水層のみ・通気緩衝シートを含むなど)を分けて判断します。最終的には、既存防水層の状態とメーカー仕様を確認して決定します。
表は左右に動かせます。
| 確認された状態 | 検討する対応 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 小さく安定した膨れ | 経過観察 | 破断・漏水の兆候や変化がないかを確認 |
| 局所的な膨れ | 部分補修 | 原因への対策が可能で、周囲の防水が健全か |
| 少数の膨れでも全体が改修時期 | 全面改修 | 今後の補修回数や改修計画も考慮 |
| 膨れが多数の箇所に分布・広範囲の接着不良 | 広範囲の撤去・再施工も検討 | 既存層をどこまで残せるか調査 |
| 継続的な雨水浸入・下地水分 | 原因対策と工法の見直し | 止水できるか、湿気を逃がす工法が適するか |
※目安を示す表です。症状だけで工事内容が自動的に決まるものではありません。雨水浸入や下地水分などの原因への対策は、部分補修・全面改修のどちらでも必要に応じて検討します。
市川塗装の現場見解
膨れが数箇所だから必ず部分補修、という判断はしていません。全体がまだ健全なら部分補修を検討しますが、改修時期なら全面改修も候補です。目先の工事費だけでなく、数年後にまた工事が必要になるかどうかも考えます。
部分補修と全面改修の費用差は、面積だけでなく、撤去範囲、下地補修、雨水浸入への対策、搬入条件などでも変わります。個別の状態を確認せず、一律の金額差を示すことはできません。
ウレタン防水の膨れを補修・再施工する方法
実際の工事では、膨れの原因と防水層の状態に合わせて補修方法を選びます。ここでは工事を依頼する際に違いが分かるよう、主な考え方を説明します。
膨れた部分を撤去して部分補修する
局所的な膨れでは、不具合のある部分を周囲の状態も確認しながら撤去します。下地にひび割れや水分の問題があれば先に対策し、新しい防水層が適切に形成できる状態にします。
そのうえで、既存防水層との取り合いに配慮し、適合するプライマーやウレタン防水材、トップコートなどで復旧します。必要に応じて補強クロスを使用します。使用材料や工程は、メーカーの仕様と現地条件によって異なります。
既存防水層を残して全面改修する
既存防水層が比較的健全で、新しい材料を重ねて施工できる条件が整えば、全面を撤去せずに改修できる場合があります。ただし、浮きや剥離がある部分を無条件に覆うわけではなく、必要な箇所は先に処理します。
既存が通気緩衝工法の場合も、ウレタン防水層だけに問題があるのか、下の通気緩衝シートまで不具合があるのかで対応が変わります。シートを再利用できるかは、シートの状態と採用するメーカー仕様を確認して判断します。
既存防水層を撤去して再施工する
広範囲で膨れや剥離が起きており、既存防水層を生かせない場合は、必要な層を広く撤去して下地を整え、再施工します。原因を調べず以前と同じ方法で施工し直すだけでは、同じ不具合が再び起こる可能性があります。
防水層だけを撤去すればよいのか、通気緩衝シートまで撤去する必要があるのか、下地の補修が必要かを分けて検討します。
既存防水層を生かせる場合は、撤去・処分にかかる費用を抑えられることがあります。ただし、不具合部分の補修量や下地の状態、施工条件によって総工事費は変わるため、必ずしも全面撤去より安くなるとは限りません。
密着工法と通気緩衝工法はどう使い分ける?
下地からの水分・湿気が継続的に影響する場合には、通気緩衝工法を検討します。通気緩衝シートなどを用いて下地からの湿気による圧力を逃がしやすくし、必要な脱気設備は採用仕様に従って計画します。これにより、下地水分による膨れのリスク低減を図ります。
外部から雨水が入り続けている場合は、サッシ・笠木・立上りなどからの浸入に対処することが先です。通気緩衝工法に変更しても、継続的な雨水浸入を止める代わりにはなりません。
また、下地水分が主な原因ではなく、局所的な接着不良などを処理できる場合は、現地条件と適合仕様に応じて密着工法も候補になります。すでに通気緩衝工法で膨れている場合は、防水材・施工条件・通気緩衝シートの状態を調べ直します。
各工法の特徴や、FRP・塩ビシート防水も含めた比較は、ベランダ・屋上の防水工法の比較で解説しています。
工法名だけでは施工できるか判断できません
既存防水層の状態や下地、材料の適合性などによって採用できる仕様は変わります。通気緩衝工法でもすべての膨れを防げるわけではなく、原因に合った対策が必要です。
施工後間もない膨れは施工不良?
施工後数か月から翌年の夏頃までに膨れが目立つようになった場合、施工時の下地状態、材料の適合性、施工条件などを確認する必要があります。ただし、発生時期だけで施工不良や材料不良と断定することはできません。
施工後数か月〜翌夏に膨れた場合
市川塗装では、施工後しばらくは目立たなかった膨れが、暑い時期に広がるような現場も経験しています。考えられる原因には、下地の乾燥不足、接着の問題、使用材料の不具合などがあり、複数の要因が重なっている場合もあります。
また、10年以上経過してから発生した膨れでは、経年劣化や後から生じた雨水浸入も考慮します。ただし、長期間経過したという理由だけで、原因が経年劣化だと確定できるわけではありません。
材料の不具合が疑われる場合のメーカー調査
広範囲に膨れが発生し、施工業者の確認だけでは原因を絞り込めない場合は、塗料メーカーへ現地調査や防水層の試料検査を依頼することがあります。材料の製造ロットなども、状況によっては調査対象になります。
ただし、メーカーの検査によって必ず原因が特定できるわけではありません。施工条件や下地の状態も合わせて検討し、得られた情報をもとに補修・再施工の方針を組み立てます。
市川塗装の現場見解
施工後間もない時期に広範囲の膨れが発生した場合、材料と施工の両面から原因を考えます。原因がはっきりしない場合はメーカーの協力を得て調査し、その結果を踏まえて不具合を繰り返しにくい補修方法を検討します。
施工後間もない膨れは元の施工業者へ相談する
防水工事からあまり時間がたっていない場合は、まず工事を行った業者に症状を伝えましょう。調査前にご自身で膨れを切ったり、別の材料を塗り重ねたりすると、原因確認や保証対応に影響する場合があります。
無償で補修されるかどうかは、原因、施工契約、保証内容などによって異なります。施工後間もないから必ず無償、あるいは年数がたっているから必ず有償、と一律に判断できるものではありません。
まとめ|膨れの原因と防水層の状態から判断
ウレタン防水の膨れは、原因や既存防水層の状態によって対応が変わります。軽微で状態が安定していれば経過観察を検討でき、局所的な膨れで原因への対策ができれば部分補修が候補になります。
一方、防水層全体が改修時期なら、膨れが少なくても全面改修を検討します。全面改修する場合も、既存防水層を残せるか、どの範囲を撤去すべきかは別に判断します。
重要なのは、膨れだけをなくすことではなく、原因に対処し、今後の防水性能を維持しやすい工事を選ぶことです。
参考資料
- AGCポリマー建材「サラセーヌの特長」:既存ウレタン防水層への塗り重ね改修など
- AGCポリマー建材「通気緩衝AV工法」:通気緩衝工法の仕組みと適用の考え方
参考資料確認日:2026年10月8日。本文の「市川塗装の現場見解」は、当社の施工経験・判断を示すもので、メーカーの一般的な見解と区別しています。
ベランダ・屋上の防水改修をご検討の方へ
市川塗装では、既存防水層の劣化状況や改修範囲を確認し、まだ使用できる防水層を生かす方法も含めて工事内容を検討します。防水層の膨れや改修時期についてのご相談は、下記からお問い合わせください。
※雨漏り調査・修理のみのご依頼は、現在受付を停止しています。













































AKIHIKO ICHIKAWA