塗装作業の前段階で行われる下地処理はとても重要です。その下地処理の中でも、省略できない下地処理工程といえば、「ケレン」です。ここでは、塗装前作業で行われるケレンの役割や作業内容について簡単に解説していきましょう。
「ケレン」と呼ばれる理由
ケレンは、塗装業界ではよく使われている用語ですが、英語のクリーンが訛ってケレンになったのではないかと言われています。ケレンは、鉄部の錆び落としとしての意味合いが強く、他の言葉では、素地調整、素地ごしらえの意味として捉えられています。下地や素地は同じような意味ですが、ケレンとは、塗装前に塗装面をきれいに整えることが本来の目的であると考えていただいていいでしょう。
塗料を密着させる重要な役割
ケレンを行うと、塗装面がきれいになり、塗料の密着度が高まります。塗装面をきれいにし、整えることを、「整調」といいます。塗装面に汚れや古い塗膜、異物、塵埃、錆びなどがあると、塗装面が凸凹しており塗膜がうまく乗らずに塗膜の効果が発揮できないでしょう。錆び処理が甘いと裏側で錆びが進行し、短期間で塗膜が剥がれていってしまいます。
ケレンでしっかりと塗布面をきれいに整えることで、塗布面と塗膜がしっかりと密着するようになります。また、ケレンには、微細な傷をつける作業があり、塗料がそこに入ってしっかりと密着するようになります。このように、塗布面にわざと傷を入れて凸凹を作り、塗膜をしっかりと定着させることを、投錨効果やアンカー効果と呼んでいます。
4つのケレンの区分と作業内容
ケレンには、4つの種類があります。(1種~4種まで。)1種~3種ケレンは、電動工具や剥離剤などを使い、手間のかかるケレン作業です。そして、4種ケレンは、「目荒し」といって表面に細かな傷をつけ、塗料の密着性を高めるために行う程度の軽いケレン作業です。
1種ケレン、ショットブラストやサンドブラスト、剥離剤を使用し、錆びなどを完全に除去するケレン作業です。橋梁や船舶での重防食目的で実施されています。
2種ケレン、電動工具を使用し、古い塗膜や錆びを除去します。鉄骨構造物で実施されています。
3種ケレン、電動工具を使用し、浮いた塗膜を除去します。戸建て住宅やRC造りの建物でよく実施されています。
4種ケレン、下地の状態がよいときは、目荒し目的で4種ケレンを行います。研磨紙を使い、汚れやチョーキング現象で出た粉化物を取り除きます。
ケレンでよく使われる道具の紹介
電動工具は、サンダーやディスクサンダーと呼ばれる道具を使います。刃の部分が自由に付け替えられます。また、オービタルサンダー、ランダムアクションサンダーなど、削る面に対応した電動工具もよく利用されています。
手工具もケレンでは重要な道具です。サンドペーパー(紙やすり)、ケレンハンマー、スクレパー、皮すき、ワイヤーブラシ、剥離剤、錆び落としに使う酸性の薬剤などがよく使用されています。
AKIHIKO ICHIKAWA