下地処理では、高圧洗浄やケレンなどの他、重要な「クラック補修」と呼ばれる下地処理工程もあります。外壁に発生するクラックは、規模や大小もさまざまです。外壁材や塗膜の種類に応じて的確な補修方法を選択しなければなりません。
下地処理ではとても重要なクラック補修
さまざまな外壁材の種類がありますが、モルタル外壁などはクラックが発生しやすく、表面上は特に問題ない場合でも経年劣化により少しずつ小さなクラックが発生し、放置しているとひび割れが大きくなり、雨水が浸入して雨漏りが発生したり、いつも水分を含んだ状態になり、建物内部でカビなどが発生したりすることがあります。
最近主流の窯業系サイディングボードでは、継ぎ目のコーキングのひび割れ補修が行われたり、地震や大きな揺れによる塗膜や外壁材の大小クラックの補修が行われています。
各種クラック補修の工法と費用相場
・ダイレクトシール工法(刷り込み工法)
クラックの深さが小さいときに実施されている工法です。0.05~2.5ミリ程度のクラック。
施工単価は、1平米あたり1500~2300円です。
幅や深さが0.05ミリ未満のクラックは、「ヘアークラック」と呼ばれています。ヘアークラックは、補修が必要ではありません。弾性塗料を使用し塗装でクラックを上から埋めてしまいます。
一方、幅や深さが0.05ミリ以上のクラックは、「構造クラック」として分類され、ひび割れの程度に応じた補修が行われています。ダイレクトシール工法を簡単にご説明すると、最初に下地の清掃を行い、汚れや古い塗膜を取り除きます。その後、プライマー、シーリング材、樹脂モルタル、エポキシ樹脂などを充填し補修します。
・Vカット(Uカット)シール工法
クラックの幅や深さは、2.5~15ミリと比較的大きめです。施工単価は、1平米あたり1200~2500円です。樹脂の充填の前に、グラインダーを使ってクラック面をV字やU字にカットし、クラック面を広げた後にシーリング材、樹脂モルタル、エポキシ樹脂を充填します。
・低圧注入工法
クラックの幅や深さは、15ミリ以上と比較的大きめです。施工単価は、1平米あたり3000~4500円です。
モルタル外壁やコンクリートは、水分の吸収と乾燥を繰り返して収縮するため、クラックが発生しやすくなっています。サイディングボードは、経年劣化が進んで耐用年数を過ぎてしまっている場合は、クラック補修よりも張り替え工事を実施したほうがいい場合があります。
クラック箇所の水漏れ・雨漏りに要注意
外壁材の表面から見ると、小さなクラックに見えたとしても、その内側では雨水が浸入し、建物内部の腐食が進行している場合があります。水漏れや雨漏りが発生しているかどうかは、専門家にも判断しにくく、湿った部分があれば、全部取り除いたうえで内部の状態を確認するしかないでしょう。木材は腐りやすいので、構造クラックの補修が甘いと根本的な解決にはなりません。クラック補修に関する知識、経験や施工実績の豊富な塗装業者に仕事を依頼するようにしましょう。
AKIHIKO ICHIKAWA