外壁塗装で使う弾性塗料の役割や工法についてのまとめ
モルタル外壁への外壁塗装を行う時、「弾性塗料」と呼ばれる特殊な塗料がよく使われています。なぜ弾性塗料を使うといいのかといえば、モルタル外壁のクラックを防いで耐久性を高められるので外壁の寿命を延ばす効果があるからです。
汎用塗料とは異なる性質を持つ弾性塗料には、どのような特徴があるのでしょうか?また、弾性塗料を使用するときの主な3つの工法に関してもご説明しています。
ゴムのような柔らかさを持つ弾性塗料
弾性塗料とは、塗膜の弾力性が高い性質を持つ塗料のことです。弾性塗料の中には、弾性力の違いによる別の「微弾性塗料」というものも存在し、塗装業界では弾性力の基準を設けて定義し、この塗料を使い分けています。
弾性塗料といえば、20℃で120%以上伸びる塗料のことを指しています。そして、微弾性塗料の場合は、20℃で100%以下の伸び率の塗料のことを指しています。
弾性塗料であっても、数年で弾性の効果がなくなるものが多く、経年劣化でだんだん硬くなって、その効果が薄れていきます。
弾性塗料にも製品ごとに定められた寿命がありますので、目安となる耐久年数を過ぎる前に塗装メンテナンスを行うことが大切です。
弾性塗料を使用する理由は、モルタル外壁に発生しやすいひび割れや壁の動きに追従して、塗膜のひび割れ(クラック)を防ぐことができるからです。
通常の塗料で塗装していた場合は、強い力に耐えられずに塗膜面にすぐにひび割れが入るようになり、防水性が低下して簡単に雨水が入り込んでしまいます。
適切な弾性塗料で塗装すると、塗膜のクラックの発生を防ぎ、ひび割れしにくくなるので、防水性が高まります。
特にモルタル外壁は通常の使用でもひび割れすることが多いので、弾性塗料と共に使用され、わずかなクラックなら塗膜が外壁を保護できるようになっています。
主にモルタル外壁での使用実績が多い
モルタル外壁は、地震による揺れだけではなく、トラックなどの大型の車が通っただけでも振動し、こうしたいろいろな揺れが続くと外壁のひび割れが生じやすくなります。
クラックやひび割れを予防するために、建物のわずかな振動にも対処・追従できるような塗膜を作るのが、弾性塗料による塗装です。
ひび割れが起こりやすいモルタル外壁の塗り替え時には、施工前に大小のひび割れ補修を行うことがほとんどです。
適切なクラック補修をした後に弾性塗料を塗ると、外壁と塗膜をしっかりと保護することができ、正常な防水性能も発揮できます。
しかし、窯業系サイディングには弾性塗料が使われていません。
弾性塗料がサイディングに使われていない理由は、サイディングが熱を持ち、塗膜の膨れ現象が起こるためです。
プロが失敗することはありませんが、使い方を間違うと弾性塗料であっても逆効果になりますので、お住まいの外壁材の種類についてはきちんと調査して把握しておきましょう。
板状のサイディングにはクラックが発生しにくいので通常の堅い塗料でも問題ありません。
その代わり、目地部分には柔らかいシーリング材を使うようになっており、シーリング材が揺れや振動に対応し、外壁材を保護しています。
主な弾性塗料の3つの工法とは?
塗装工程が増えるほど、塗膜が厚みを増し防水性や耐久性はアップしますが、コストや作業の手間が増えてしまうので、逆効果になることがあります。
弾性塗料を使った代表的な塗装工法とは、5工程の複層弾性塗料仕上工法、3工程の単層弾性塗料仕上工法、3工程の微弾性塗料と上塗りの仕上工法のことです。
・複層弾性塗料仕上工法(弾性力が最も高い)
下塗りでシーラーを塗布した上に、弾性塗料で中塗りを2回行います。
最後の工程では、通常の塗料での上塗り塗装を2回行います。
この塗装工法は、弾性力が最も強く、5工程もあることから塗装作業時間も長時間必要となるでしょう。
下塗り1回、中塗り2回、上塗り2回の計5回塗装する「複層仕上げ」と呼んでいます。
・単層弾性塗料仕上工法(弾性力が中程度)
単層仕上げになり、シーラーによる下塗り工程の後、弾性塗料を使っての上塗りを2回行います。・微弾性塗料と上塗りの仕上工法(弾性力が最も低い)
微弾性塗料だけを使用しています。下塗りに微弾性フィラーを使用しますが、上塗り工程では通常の塗料で2回の塗装を行う工法です。
3工程で塗装作業が済み、中・上塗り工程で通常の塗料を使用するため、最も施工コストを抑えることができます。
しかし、微弾性塗料は、1~3年程度で弾性がなくなるので、高い弾性力の効果が期待できません。
弾性塗料は、ひび割れの多いモルタル外壁によく使用しますが、弾性塗料だけで施工すると施工価格が高くなることがあります。
弾性塗料や微弾性塗料は、無駄に使うとコストアップになるので、施工コストをできる限り抑えながら、高い効果を得るようにしなければなりません。
弾性塗料を塗布していたとしても、下塗りに使うことが多く見た目にはあまり関係がないので、手抜き工事や悪質な塗装業者に騙されることがありますので注意しましょう。
契約前の見積時にも、わかりにくい塗装工程、不明な価格の決定方法、よくわからない弾性塗料の効果など、怪しい点があればその場でお断りする勇気も必要です。
必ずわかりやすく説明できる担当者がいる塗装業者を選ぶようにしましょう。
弾性塗料を使って高いコストをかけて塗装しても、塗装で失敗すると、塗装後数年でモルタル外壁の塗膜に多数のひび割れが生じることがあります。
よい塗料を使っていても、塗装の経験や技術が伴わない場合もありますので、塗装業者選びで失敗しないようにしてください。
AKIHIKO ICHIKAWA