屋根塗装の見積書では、必ずといっていいほど登場する専門用語に「縁切り」や「タスペーサー」という言葉があります。屋根塗装では欠かせない作業ですが、その重要性や相場単価などについてもしっかりと理解しておきましょう。
縁切りが必要な理由
屋根塗装で縁切りが必要な理由の一つが、雨漏りを予防することです。大雨や台風・突風による大量の雨により、屋根材の下にも雨水が浸入することがあります。こうして偶然浸入した雨水は、必ず排出しなければなりません。
その役割を果たしているのが、屋根材の表面にある溝です。屋根を塗装したときにこの溝を塞いでしまうことがあります。雨水の排出ができなくなると、屋根の下地に湿気が溜まり、腐食や雨漏りの発生原因となります。
外側と内側の温度差による内部結露も屋根下地の湿気の原因です。建物内の温かい空気は、上昇して屋根裏に集まります。寒暖差の激しい地域や季節になると、屋根の内側に結露が発生します。結露が逃げる隙間がないと、断熱材や木材が湿り、腐食します。結露も雨漏りの発生原因となることがありますので、屋根塗装では忘れずに縁切り作業を行います。
縁切りは正しい方法で行うこと
よく実施されている縁切りは、カッターを使っています。スレート屋根の上塗り塗装を行った後、重ね目部分の塗膜をカッターで切っていきます。
一つ一つ丁寧に作業を行う必要があり、時間がかかる根気が必要な作業です。
最近では、縁切り作業が不要になる「タスペーサー」を使った縁切りが増えています。下塗り塗装後に、スレート瓦の重ね目にタスペーサーを挿し込んで、隙間を作っていきます。平均的な30坪の建物の屋根ですと、1000個近くのタスペーサーを使います。1000個も設置しますが、縁切りが不要となるので、作業が楽になります。タスペーサーの費用も合計3~5万円程度で決して高額なものではありません。
縁切りの作業のタイミングも重要
縁切りが実施されるタイミングにも注目してみましょう。カッターを使って縁切りする場合は、塗装工事が終わり、十分に塗装を乾燥させ、完全に塗料が硬化した後に行われます。手作業ですので、時間もかかりますしかなりの重労働です。
一方、タスペーサーを使う場合は、塗装の途中で使用します。タスペーサーは、下塗りが終わった後に屋根に取り付けていきますので、順番が少し異なることに注意しましょう。下塗りでタスペーサーを使用すると、中塗りや上塗り後も隙間を塞ぐことはありません。塗料が乾燥した後、縁切りをする必要もなく、人件費や縁切りの作業時間も不要となり、屋根塗装に伴うコストを大幅に削減できます。
AKIHIKO ICHIKAWA