「大規模修繕工事」は、戸建て住宅よりも大規模なマンションなどの集合住宅でよく聞かれる言葉です。実際に施工を依頼するのは管理組合などになり、個々人が直接施工の現場に関わることは少ないのかもしれません。しかし、大規模修繕工事ではどのような点に気をつければいいかなどを基本的な知識として知っておいてください。
「大規模修繕工事の進め方」も公表されています
公益財団法人マンション管理センターでは、「大規模修繕工事の進め方」を公表しています。それによると、構造上の安全性の確認、防火区画等の適法性の確認、不燃材料等の内装制限の適合性確認、シックハウス・アスベスト対策、床や壁などの共用部分の改造などが挙げられています。
建物が安全で、構造上も問題がなく、火災や衛生上の問題がなく、万一のときにも建物が倒壊せずに住んでいる人が逃げられるようになっていることがポイントです。
他にも壁や天井などの内装の防火対策、シックハウス・アスベスト対策、塗装を含めた床や壁の共用部分の改造工事なども大規模修繕工事のチェックポイントです。
最終的には、建築基準法やその他関連規定に適合しているのかどうかも確認しなければなりません。管理組合では、法令遵守を前提とした大規模修繕工事が行われるように厳しくチェックしています。
大規模修繕工事は依頼する業者によってメリットやデメリットがある
大規模修繕工事は、日頃から管理している管理会社の他、その建物を建設した建設会社・ハウスメーカー、地元の工務店、大規模修繕が得意な施工会社などが請け負います。
管理会社は、その建物の状況をよく把握していますが、メンテナンスや修繕工事に詳しくない場合もあります。自社施工部門を持つ管理会社でなければ、逆に下請けの工事会社に丸投げになることもありますので注意が必要です。
建物を建てた建設会社やハウスメーカーは、建物の仕様を熟知しており、メンテナンス時期も把握しています。建て替えが多かった時期もありましたが、大規模修繕のニーズが増えるにつれて、建て替えから大規模修繕工事にシフトしています。
しかし、広告宣伝費が高くなりがちで、工事代金が高くなるデメリットがあります。地元の工務店の場合は、実際に現場で工事を行う職人がたくさんそろっています。
賃貸経営などには詳しくないので、大家さん自身が大規模修繕工事の監理監督を行う場合もあり、最も低コストで大規模修繕工事ができる代わりに、依頼して施工してもらうまでのハードルが高くなってしまいます。
関わる人が多く多額の予算が必要な大規模修繕工事
大規模修繕工事は、多額の資金を必要とします。分譲マンションでは、毎月修繕積立金を積み立てています。修繕積立金は、将来の大規模修繕工事に備えて計画的に積み立てられるようになっています。
工事の見積りにおいても、依頼する業者により、数百万円の差が生まれます。大規模修繕工事では、多くの人が関わるだけではなく、現場や工事の監理、建物や修繕に関する知識やノウハウが必要です。
各専門分野のプロフェッショナルと工事や現場全体をうまくまとめられる人材がそろう会社に大規模修繕工事を依頼すると、適切な値段での見積りが行われます。
値引き交渉は、手抜き工事が行われる可能性を高めてしまいます。材料費や人件費を無理に削るような値引き交渉は控えたほうがいいでしょう。
AKIHIKO ICHIKAWA