下塗り塗料で使う「シーラー」と「フィラー」のご紹介
屋根や外壁の塗装のメインとなる塗装工程といえば、三度塗りが基本で、各工事業者や塗装職人も塗装工程を省略せずにメーカーが指定する決まり事をしっかりと守っています。
今回は、中塗りや上塗りとは少し意味合いが異なる一回目の塗装である下塗り工程にスポットを当てています。
下塗り工程では、中・上塗り塗料とは働きの異なるシーラー、プライマー、フィラーという名称の下塗りにしか使えない種類の塗料(下塗り材)を使用しています。
また、シーラーとプライマーの両者は、似た働きをする下塗り材ですが、塗装の現場では「シーラー」と「フィラー」といえば、状況に応じてきちんと使い分けされています。
その理由や各下塗り材の特長についてみていきましょう。
「シーラー」と「フィラー」の違いについて
シーラーは、英語の意味を調べると、接着する、覆い隠す、という意味を持つ言葉です。
シーラーなどの下塗り材を使って作業する下塗り工程では、モルタルやコンクリートなどの吸込みのある素地にも使うと塗料の吸い込みを抑えることができます。また、シーラーには下地との密着性を高める大切な役目があります。
一方のフィラーといえば、充填材や詰め物といった意味を持つ英語です。フィラーで下塗りすると、塗装面に凹凸を持つ下地を埋めて平滑にできます。
下塗りで使うと凹凸を平らにできるので、特殊な補修が不要な細かいひび割れが発生している塗装面の補修にも使われています。
シーラーの特長や価格
下塗りでのシーラーは、次の工程となる中・上塗りとの塗装面の密着性を高める重要な塗料です。
多くの上塗り材には密着性を持たせていないため、下塗りのシーラーが重要な役割を果たします。
さらに、シーラーは、下地補強という意味合いが強く、下塗りの出来がいいと、上塗り塗料の塗膜性能が十分に発揮され、塗装品質も向上し、耐久性能アップにつながります。
モルタルやコンクリートのような素材と同じく、塗料を吸込みやすい下地も多いので、シーラーを多めに塗布すると、吸込みや吸込みムラを防止でき、安定した塗装品質に仕上がります。
シーラーにも他の塗料と同じような分類で、水性と油性の2種類のタイプが存在します。
水性タイプは、安全に取り扱いができ、臭いも少なめですが、浸透性が低く、通常よりも長い乾燥時間が必要となりますので、長時間の施工時間がかかってしまいます。
逆に、油性タイプのシーラーを使うと、浸透性が高まり、乾燥時間が短いというメリットがありますが、臭いがきつくなりますので、慎重な取り扱いや近隣住民への配慮などを事前にしっかりと対策しておきましょう。
見積書でのシーラーの単価の目安は、1平米あたり600~900円ほどになります。
シーラーを使うタイミングとは、「下塗り」という重要な塗装工程になりますので、下塗り工程を飛ばしたり、省略したりすることはないと考えてください。
「シーラー」と同じ働きをする塗料には、「プライマー」という下塗り材があります。名称は異なりますが、一般的には、プライマーとシーラーはほぼ同じ意味で使用されています。
フィラーの特長や価格
フィラーは、凹凸や段差のある下地、細かなクラック(ひび割れのこと)の入ったモルタル外壁材でよく使用され、下塗りでフィラーを塗布すれば、塗装面を平滑にできます。
フィラーは、下地調整としての重要な役割を持っていますので、シーラーと同じ程度の頻度でよく使われています。
フィラーは、シーラーや通常の塗料よりも厚めに塗ったほうが効果が高いので、塗布量が2倍以上になる「砂骨ローラー」を使うと作業が効率よく進みます。
フィラーは、高粘度の下塗り用塗料で、顔料や骨材、セメントなどの無機成分を多く含んでいる点が特徴です。
フィラーの仲間の中で、塗装の現場で最も使用されている塗料の種類としては、「微弾性フィラー」となるでしょう。
微弾性フィラーは、シーラーとフィラーの機能を兼ね備えているため、一つの材料で下塗り工程が完了できることから、時間の短縮や無駄な作業の省略にもなり、多くの下塗りで利用されています。
微弾性フィラーを使用する工法で下塗り工程で塗布すると、弾力性によりヘアクラックがあっても追従でき、高い防水性能を発揮します。
表面には弾力がないため、上塗り塗料との塗料の付着性も高められます。
ひび割れとしては軽度にはなりますが、ヘアクラックの多いモルタルの外壁材などでも、微弾性フ ィラーが下塗り工程でよく使用されています。
見積書での微弾性フィラーの単価の目安は、1平米あたり900~1200円です。
AKIHIKO ICHIKAWA