外壁クラックの発生原因とそれに対応した補修方法
外壁塗装工事では、塗装直後にも塗装した塗膜にクラック(ひび割れ)ができることが多く、クラックの発生は避けて通れない問題となっています。
クラックは、症状がどの程度なのかやどのように発生したかによって、複数の種類があることがわかっています。
そのように考えるなら、正しい方法で補修を行わなかった場合は、根本的な解決にはいたらないということになってしまいます。
ここでは、クラックの根本的な原因を解決するために、外壁塗装においてクラックが発生する原因や症状別にみた補修法について解説していきます。
原因別にみたクラックの種類
塗装された外壁表面にできるクラックは、どれも同じように見えますが、クラックには複数の種類があることがわかっています。
その種類を原因別に見て分類すると、ヘアクラック、乾燥クラック、構造クラック、縁切れが原因のクラックなどになるでしょう。
ヘアクラックは、傷が約0.3ミリ以下の比較的小さなクラックです。
たとえるなら、髪の毛のように細くて長さの短いひび割れのことで、外壁表面のいろいろな箇所で発見できることがありますが、これは塗膜表面にできるクラックです。
乾燥クラックといえば、モルタル外壁表面に発生しやすいクラックで、湿式工法を採用した時に乾燥過程で水分が蒸発して成分が収縮する時に生じるひび割れのことです。
乾燥クラックは、ヘアクラックに比べてひび割れの幅が狭いという違いがありますが、ヘアクラックと発生原因が少し異なることを知っておきましょう。
構造クラックとは、傷の大きさが0.7ミリ以上あって、溝が深くて傷が大きめのクラックです。
これは、建物の構造的な欠陥がある場合や建物の不同沈下、凍結と融解の繰り返しによるひび割れの発生などが原因となることがあります。
他にも、筋交い不足といった構造的な欠陥が歪みを発生させ、大きな揺れなどの強い力が外壁材に加わり、ひび割れを発生させてしまいます。
縁切れが原因としてできるクラックの場合は、モルタル外壁の作業の中断や作業のやり直しにより発生しやすいクラックです。
構造クラックとよく似た見た目を持つクラックが生じてしまいますが、大きさは、0.3~0.7ミリ程度で、構造クラックよりも小さなひび割れで判断できます。
クラックが発生する原因とその症状とは?
・ヘアクラック
ヘアクラックは、外壁材に発生するクラックの中では最も小さなクラックです。
傷の大きさも0.3ミリ以下の髪の毛のような形をしたクラックとなり、よく見なければ発見できないことがあります。
ヘアクラックが起こりやすい理由は、塗膜の経年劣化、不適切な塗装間隔による塗装作業、弾性力の高い塗膜の上に硬質塗膜を塗装した時に起こる不具合などが考えられます。
・乾燥クラック
モルタル外壁施工時の多くは、湿式工法が採用されています。
注意点としては、乾燥過程で完全に乾ききらないうちに、次の塗装工程に進んでしまうことです。塗装がきちんと乾燥しきっているのかは、表面的にはわかりにくいために起こりうるトラブルです。
塗装中にも素地が少しずつ収縮していくため、追随できなくなった時には、新しい塗膜であっても同じようにひび割れを起こしてしまうからです。
乾燥クラックになると、ひび割れの幅が構造クラックと比較すると狭くなっています。
・構造クラック
構造クラックになると、0.7ミリ以上の比較的傷が大きくて目立つクラックとして判断します。
建物に何か構造的な欠陥があれば、地震による揺れや建物に大きな力が加わった時の歪みの発生により、強い歪力が外壁材に伝わってひび割れを生じさせます。
構造クラックは、建物全体の不同沈下、外壁表面の凍結と融解の繰り返しによるひび割れの発生といった複数の原因が問題になっているということが考えられます。
地震などにより突如発生するクラックになることが多く、経年劣化とは無関係に生じるため、発生時期の新しいクラックとして認識することが多くなります。
・縁切れが原因のクラック
モルタル外壁の湿式工法により発生するクラックです。
モルタル外壁特有の外壁材の特徴によるもので、施工時に作業の中断ややり直しが多かった場合には発生しやすいクラックです。
クラックの症状に対応したクラック補修方法
・ヘアクラック
傷が小さくて溝の浅いクラックですので、塗膜にのみひびが入った状態です。傷が小さいので、外壁塗り替え塗装によって傷をカバーするような修理方法でも問題ありません。
劣化状態がひどくないのであれば、上塗り材の再塗装が行われます。
傷の程度が軽度のヘアクラックであっても、下地にまで傷が入ってしまっている場合は、全面剥離による再塗装を行うしかないでしょう。
・乾燥クラック
下塗りで微弾性フィラーだけで対応すると、ひび割れが再発することがありますので、何らかのクラック補修が行われることがあります。
例えば、問題となる部位にシーリング材やエポキシ系充填材を注入するような補修を行った後、微弾性フィラーや弾性仕上げ材による塗装でクラックの補修を完了させます。
・構造クラック(縁切れが原因となるクラック)
外壁クラックの発生原因が建物の構造や躯体にあると考えられることが多いので、塗装する場合でも塗装前に建物の構造補強が必要です。
クラック箇所には、特殊な加工を行った後に、シーリング材を充填して補修を行っています。
特殊な加工とは、クラックの発生した部分の外壁材を一部削り落とすような作業のことで、十分な深さと大きさのある目地を作った後にシーリングを充填して補修を行っています。
AKIHIKO ICHIKAWA