スレート屋根塗装でタスペーサー(縁切り)を使う理由
タスペーサーとは、屋根の塗装で縁切り(えんきり)に使用し、作業をスピーディーに安全にできる便利な道具です。従来型の「縁切り工法」は、手間がかかり安全性にも問題があります。
しかし、縁切りに使う便利な道具「タスペーサー」を使うと、作業が簡単で時間の短縮になるうえに、確実に縁切り作業ができるという大きなメリットがあります。
ここでは、縁切りの重要性やタスペーサーを使ったほうがいい理由、正しい使い方などについて解説していきます。
スレートの屋根塗装ではタスペーサーを使うと作業効率アップ!
屋根塗装を行う際に、縁切り工程が必要な代表的な屋根材といえば、スレート屋根です。
スレートとは呼ばずに、カラーベストやコロニアルなどと呼ぶことがありますが、どちらもスレート屋根の仲間です。
なぜスレート屋根の塗装に縁切りが必要なのかといえば、塗装後に多めに使用した塗料が、屋根と屋根の隙間を塞いでくっつきやすくなっているからです。
塗装が乾燥すると、隙間を塞いだ塗料が硬くなって雨水や湿気の排出がしにくくなり、内部に湿気が籠り悪影響を及ぼします。
従来の縁切り作業では、屋根塗装した後にスレート屋根材一枚毎の隙間にカッターを入れ、隙間を広げるような縁切り作業を行う必要があるため、長時間作業になってしまいます。
従来のカッターを使用した手作業による縁切りは、大変時間がかかり、塗装後の屋根の上での作業ですので、二度手間になってしまいます。
すでに塗装した屋根の上を歩いての作業ですので、塗装したところを汚したり、耐久性が落ちた部分のスレートを割ってしまったりすることもあり慎重な作業が必要です。
そこで、現在では、「タスペーサー」と呼ばれる縁切り専用の部材をスレート屋根の瓦と瓦の隙間に挿入してから塗装を行っています。
この施工法なら、塗装した後、挿入したタスペーサーを外すだけで作業が終了しますので、大幅に時間短縮ができるようになりました。
屋根と屋根の隙間が必要な理由
スレート屋根を塗装すると、塗料の種類にもよりますが、余分な塗料で上の屋根と下の屋根の隙間を埋めてしまうことがあります。
このような横に入ったわずかな隙間がとても重要で、この隙間がないと、雨水がうまく排出されずに、屋根の内側にずっと残ってしまいます。
湿気は屋根材にはよくない影響をもたらし、屋根の下地の腐食の原因にもなり、雨漏りしやすい環境を作ってしまいます。
そのため、スレート屋根の塗装時は、たいていの場合には縁切りを行っています。
冬期などは昼と夜の気温差が激しくなりますので、屋根と屋根裏の間の隙間に内部結露が発生しやすい環境です。
- 冬期でも同じように内側に水分が溜まると、内部腐食を引き起こします。
また、雨水が浸入しない場合でも、内部結露により水分が溜まることも多いので、縁切りにより隙間を作って、湿気や水分を排出しやすくしています。
従来型の「縁切り工法」はデメリットが多い
屋根の塗装後に隙間に固まった塗料をスクレーパーやカッターで削っていく工法が、従来型の縁切りです。
縁切り工法のデメリットは、一度カットしても再度付着する可能性が高く、削った部分が傷みやすくなっている点です。
従来型の縁切りは丸一日かかる作業になることが多く、スケジュールに余裕がない場合は焦って失敗しやすいでしょう。
タスペーサーをうまく使うコツ
タスペーサーは、従来型の縁切り作業のデメリットを解消し、長時間の作業が必要なくなり、安全に作業することができます。
タスペーサーを使うタイミングは、下塗りが完了した時が挿入するポイントとなっています。
屋根と屋根の隙間に一つずつ丁寧に挿入し、隙間を作っていきます。一枚の屋根材につき2枚のタスペーサーを使っていますので、数百枚~千枚単位の大量のタスペーサーを使います。
また、隙間が4ミリ以上ある場合は、隙間が広すぎてタスペーサーが使えず、挿入してもタスペーサーが落下して危険です。
常にタスペーサーを使うわけではありませんが、日のよく当たる場所の屋根は反りも大きくなるため、自然に大きな隙間ができ、タスペーサーを必要としません。
現場では、適宜、タスペーサーを使うべきかどうかを判断しつつ上手に活用していますので、塗装作業も効率がアップし、スピーディーに作業を完了させることができます。
AKIHIKO ICHIKAWA