もっと詳しく知りたい「光触媒塗料」
耐久性が高く、セルフクリーニング機能を備えた塗料として、常に注目を浴びてきた光触媒塗料ですが、デメリットも併せ持っているため、高い費用をかけても塗り替えを希望する人と希望しない人に分かれてしまうようです。ここでは光触媒塗料の真実について少し詳しく解説していきましょう。
一般塗料とは違う夢の塗料?光触媒塗料
光触媒塗料というと、「セルフクリーニング機能を備えた塗料」というだけで、メンテナンスが不要で楽に取り扱えるようなイメージがありますが、実際にはさまざまな問題を抱えており、場合によっては期待するような光触媒が持つ効果を最大限に発揮できないままになってしまうこともあります。光触媒塗料は、太陽光を吸収して各種化学反応を促進させる物質(酸化チタン)を含んでいます。
酸化分解機能と超親水化に注目
光触媒には、酸化分解機能と超親水化の2つの機能があります。太陽光が光触媒塗料に当たると、酸化チタンなどの光触媒に有機化合物が接触し、そこに含まれる炭素が二酸化炭素になるまで酸化分解することがわかっています。
有害な化学物質なども光触媒の働きにより活性酸素や水酸ラジカルなどが酸化分解して二酸化炭素や水に分解されます。光触媒塗装した表面は、コーティングされており、水となじみやすい状態になっています。こうした状態のことを超親水性と呼びます。
超親水性の状態になると、塗膜表面が水とよくなじみ、薄く広がっています。まるで水が膜になっているかのような状態です。逆の状態が撥水性ということを考えるとイメージしやすいかと思われます。
酸化分解機能と超親水化によりセルフクリーニング機能となる
前項でご説明した酸化分解機能と超親水化の機能は、それぞれにガス分解、抗菌、水浄化、防曇などの機能があります。2つの機能を組みあわせると、セルフクリーニング機能が発揮されます。
光触媒塗装により、セルフクリーニング機能が発揮されるメカニズムを次に解説します。塗装面に汚れが付着した後に、汚れが酸化分解されます。その後、雨が降ったときに、超親水化した塗装面と分解された汚れとの隙間に雨水が滑り込んでいきます。そして、雨水によって浮いた汚れがきれいに洗い流されるといった流れになります。
耐用年数が20年近い光触媒塗料の問題
光触媒塗料は、耐用年数が15~20年もあり、セルフクリーニング機能を備えていることから、塗料のグレードの中でも最も優れた性能を持つ塗料といってもいいかもしれません。しかし、大手の塗料メーカーは、光触媒塗料の生産や販売を行っていません。
特に2017年に業界初の光触媒塗料であったTOTOの「ハイドロテクトコートシリーズ」の販売が全面中止になったことは、光触媒塗料は実際には人気がなかったことをよく示しています。
光触媒塗料の考えられる主な問題点は、高い技術が求められる開発の問題、塗装工程の指定があり提案がしにくい、一切汚れないわけではない塗料、通常の1.5倍の価格、混色のバリエーションの少なさなどです。これらの各種問題が解消されない場合には、あえて光触媒塗料を選ぶことはなく他の塗料を選択せざるをえなくなります。
AKIHIKO ICHIKAWA