漆喰は日本では古くから使用されてきたおなじみの建材の一種です。漆喰は、水酸化カルシウムや炭酸カルシウムなど主成分としてできています。
都市部の一般住宅で漆喰を見かけることは少なくなっていますが、日本では古くから、寺社の建物や城郭・土蔵などにも使われてきましたし、田舎の一戸建てでは今でも現役の立派な漆喰を使った和風建築を見かけることがあります。
また、民家では、外壁以外にも、瓦や石材の接着や目地の充填、室内の内装としても施工されていることがあり、目立たないところで漆喰が活躍していることがあります。
漆喰には自然素材の風合いや重厚な質感などの見た目のよさはもちろんのこと、防カビ性、微多孔質な構造による吸放湿性などの多くの優れた機能を備えているため、今でも利用価値の高い建材です。
漆喰に関するメンテナンスとしては、漆喰を塗り込むパターンと漆喰にペンキを塗装するパターンがあり、判断が難しい場合がありますが、今回は漆喰にペンキを塗装するパターンについてご紹介していきます。
漆喰壁に塗装する時の注意点
漆喰に塗装する場合に知っておくべきことといえば、もともと漆喰自体にも吸湿・放湿性があるという点です。
つまり、木材のように吸湿や放湿を繰り返しており、漆喰壁も呼吸に似た機能を持ち合わせているということです。
このような漆喰が持つ性質を無視して普通に塗装してしまうと、塗装時にペンキなどの塗料を吸い込んでしまうので、色ムラになりやすく、塗装後1~2年もすれば剥がれが発生してしまいます。
このような塗装工事を実施してしまうと、明らかな業者の施工ミスになってしまうので、漆喰への塗装は取り扱い実績の豊富なリフォーム工事業者に依頼したほうがいいでしょう。
吸放湿性の高い漆喰壁への塗装時には、下塗りの段階でシーラーをしっかりと塗装して、漆喰の吸放湿性を止めてから上塗り塗料での塗装を行うのが一般的な塗装の流れになっています。
漆喰の性質をよく考えて塗装作業を行うことから、塗装工程も1つ又は2つも増えてしまい、漆喰への塗装は、施工コストが高くなってしまうことがよくわかります。
また、漆喰は完全硬化するまで長期間を要しますので、多くの漆喰は何年も掛かって少しずつ硬化していきます。
このような理由から、漆喰を施工した後、数年間は確実に完全硬化したとは言い切れない部分があります。
また、漆喰の保証に関しては、塗装業者が取り使っているのと同じような5年や7年などの中長期での塗装後の保証が出来ないこともあります。
下地や漆喰の性質に応じた下地調整をしっかりと行った後に塗装すれば、漆喰壁にでも効果的な塗装は可能だといえます。
塗装業者でも、下地の調整がしっかりと出来ていない状態のままで塗装作業を続けることを避けるようになっています。
室内塗装に漆喰を利用する場合
室内の漆喰を塗装する場合は、臭いが強い油性塗料ではなく水性塗料を使っています。
下塗りには水性のシーラーを使いますし、上塗り塗料も水性タイプを使用することになるでしょう。
同様に室内壁でよく使われている珪藻土なども、漆喰と同じように塗装メンテナンスが可能です。
漆喰や珪藻土を使った内壁は、いずれも臭いや湿気などを呼吸するタイプの壁ですので、取り扱いやメンテナンスには特に配慮が必要です。
今ではお年寄りやお子さんなどの他、室内で飼う犬や猫などのペットがいるご家庭も増えていますので、既存の壁紙の上にローラーや刷毛を使って塗装ができるタイプの漆喰も登場しています。
漆喰の素材としての性質をよく理解したうえで、そのメリットを十分に生かせるように、正しい漆喰施工、安全な塗装、その他メンテナンスなどを行うことをオススメします。
最近の傾向としては、外壁材といえばサイディングが主流になってきていますので、漆喰をしっかりと塗れる左官屋が少なくなってきているのが実状です。
漆喰には多くのメリットがある点についてはご紹介してきましたが、施工単価が高く施工期間も長くなってしまうというデメリットがあるため、実際に外壁材として漆喰を施工することは少なくなってきました。
しかし、少し前の和風住宅や歴史のある民家の建物には今でも漆喰が使われています。
今ある漆喰壁の建物にお住まいの方に対しては、湿度調節や抗菌作用もあって、カビやダニの繁殖を抑えるなどの多くの優れたメリットを持つ漆喰壁を大事にメンテナンスして、できるだけ長く使っていただきたいと考えています。
AKIHIKO ICHIKAWA